中山秀征が志村けんから学んだ「バカでいろよ」 “師匠”から教えてもらった明るく生きるヒント
最初は謙虚だったタレントも、人気者になり、技術も知識も身についてくると、次第に「自分を偉く見せよう」「利口に見せよう」と、振る舞いが変わっていきます。 周りに持ち上げられる環境が続くと、尊大になりがちで……。師匠は、“偉く”なって“堕ちて”いく同業者をたくさん見てきたのでしょう。 「俺たちなんて、もともと何もなかったわけだから、利口ぶるなよ」。「『バカだなぁ』ってのは、俺たちにとって最高の誉め言葉なんだよ」と、「バカでいる」大切さを繰り返し説いてくれました。
その言葉の深さを、現場で初めて体感したのは、ゲスト出演した『志村けんのバカ殿様』のスタジオでした。 志村さんはコントの収録が始まる前に、セットの建付けから、小道具の一つ一つに至るまでくまなくチェックし、その後、カメラマンに細かくカット割りの指示をしていました。 「いいか、俺たち(出演者)が上から覗くような画にするなよ」 「テレビを観ている人たちが、俺たちを“上”から見ているように、そう、この画角で撮ってくれ」
カメラアングル一つにさえ決して気を抜かない。しかも、「観客を見下ろしてしまう可能性」を意識しているのか、と驚きました。白塗りのバカ殿メイクでありながら、その姿は、巨匠の映画監督のように見えました。 ■志村流「利口ぶらない」MC術 今では有名な話ですが、志村師匠はとても勉強家で、流行りの映画や音楽をほとんどチェックし、自分のコントにどんどん取り入れていました。 そして、あまり知られていなかったのですが、実は、政治や経済にもとても詳しかったんです。でも、その知識を決してひけらかしたりはしません。
その時、世の中で何が起きているのかを捉えたうえで、自分が作るものは、世の中にとって丁度良い“下”のスタンスを目指す。師匠は、時代に合った「バカ」でいるために、あらゆる情報を貪欲に吸収していたように感じました。 そんな志村師匠の姿勢を、僕は、情報番組のMCをしている時に意識します。 たとえば、経済の話題で、専門家に「物価対策」の質問をする場面。質問の仕方は、MCによっていくつかのパターンに分かれます。