PPから10位に終わるも「下を向く必要はない」とModulo伊沢。海外目指す弟的後輩には「行っちゃえ!」
栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎで11月3日に開催された2024スーパーGT第8戦、GT500で唯一ダンロップタイヤを装着する64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTは雨の予選で見事ポールポジションを獲得したが、決勝では序盤はトップを守るも、最終的に10位でのフィニッシュとなった。レース後、スタートから前半スティントを担当した伊沢拓也に、レースの状況、そしてダンロップタイヤの手応えについて聞いた。 【写真】64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTの第1スティントを担当した伊沢拓也 GT500クラスで唯一、ダンロップタイヤを履く64号車Moduloは、フルウエット路面で実施された土曜日の予選で伊沢拓也と大草りきの両ドライバーが速さを見せ、2021年第3戦鈴鹿以来、NAKAJIMA RACINGにとって3年ぶりとなるポールポジションを獲得した。明けた日曜は前日の雨から一転、秋晴れが広がりドライコンディションでレースが行われることとなった。 「とくに心配はしていませんでした」と語る、スタートドライバーを務めた伊沢。タイヤのウォームアップの面で不安はなかったという伊沢は、次のように続けた。 「クルマのフィーリングもタイヤの状態が良いときはすごく良かったですし、タイムとしても最初はプッシュはできる状態だったので、逆に入りはちょっと抑えるくらい調子が良かったです」 「ただ、そこからはピックアップ(タイヤカスがトレッド表面に付着してグリップダウンを招く現象)とかタイヤのタレというか、そういった部分でタイヤをうまく使いこなせなかったというところは今後の課題ですね」 ■トライ・アンド・エラーの積み重ねで強くなる Moduloとダンロップは今回、新たに開発したタイヤを持ち込み、予選と決勝の両方で使用したという。 「新しいドライ用タイヤを持ってきて、ウエットタイヤも少し手を加えています。そういったトライをした結果なので正直、(10位でも)下を向く必要はなくて、これをもとにまた開発を進めていければ」と前を向く伊沢。 「逆に今までやれていなかったところをやり始めているので、こういうレースがあっても仕方ないですし、スピードは速かったのでタイムとしてはひとつの成果だと思っています」 「ブリヂストン勢を見ても調子が良いクルマと悪いクルマでは(決勝ペースは)雲泥の差でしたから、タイヤの進化もそうですが、僕たちがもっとうまくタイヤを使いこなせるようにならないといけないとも思っています」 「今回はトライしたものがうまくいかなかったですが、そういうのも繰り返しなので」 レースの序盤の8周目、フルコースイエロー(FCY)が解除された直後の5コーナーで8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTがオーバーテイク仕掛けてきた際、イン側のラインをとった首位64号車Moduloとアウト側から抜きにかかった8号車ARTAがコーナーから立ち上がるタイミングで接触した。 このシーンについて64号車Moduloのステアリングを握っていた伊沢は「横並びになって少し当たっちゃったかな、くらいで別に何かを語るほどではないです」と振り返った。 さらに「ブレーキで前に行かれた後、僕の前に中途半端なかたちでGT300のクルマがいたんです。そういった部分で流れがうまくいかなかった」と続けた。 この2周後、2度目のFCY明けに8号車ARTAからトップを奪い返すも直後の11周目に36号車au TOM’S GR Supraに先行を許し、その後2台のマシンに抜かれ実質4番手となったところで22周目にピットインした64号車Modulo。伊沢から大草りきにバトンタッチしコースに復帰すると順位は10番手まで下がっていた。 「トラブりました。詳しくは分からないのですが、給油装置あたりのトラブルみたいです。正直、トラブルがあってもなくてもというペースだったと思うので、そこはあまり気にしていません」と伊沢は説明した。 「(レースを通じて)手応えがあったかなかったかというと難しいところですが、今回のように先頭で走れたのは、チームのみんなのモチベーションにもなると思っています」と伊沢は語り、チームを牽引するベテランらしい顔を見せた。 ■“後輩”太田格之進の挑戦を後押し このもてぎラウンドの直前、伊沢と昨季2023年に64号車Modulo NSX-GTでコンビを組んだ太田格之進(17号車Astemo CIVIC TYPE R-GT)が、デイトナで行われる北米耐久シリーズの公式テストに参加することが伝えられた。伊沢はGT500に上がった早い段階から、格之進の速さを認めていた兄貴分的存在でもある。 「めっちゃ応援してます。『行っちゃえ!』という感じですね(笑)」とアメリカへの憧れを口にする後輩に向けてエールを送った伊沢。自身も海外フォーミュラのGP2(現FIA F2)に参戦した経験を持つ。また、その前年の2013年にはWTCC世界ツーリングカー選手権の日本ラウンドにスポット参戦し、世界のハコ車使いたちを相手にホンダ・シビックWTCCで戦いを挑んだ。 「どういう経緯で彼が選ばれたのか、僕はまったく知らないのですけど(苦笑)、一生懸命、応援したいと思います。すごく楽しみですよ。ここから一気に羽ばたいていく可能性もありますからね」 「僕も、IMSA(ウェザーテック・スポーツカー選手権)というものを調べました。さらに一応、来年に向けて日程が被っていないレースも調べました」と気が早い伊沢。太田格之進はまだ11月中のテスト参加が決まっているだけで、来季に関してはまだ未定だが、かわいい後輩の活躍を心から願っていることが伊沢の言葉からも感じられる。 自身も海外再挑戦の意向があるのか聞いてみたが、「違う違う違う!」と、重ねて否定。すでに後輩の応援モードに入っているようだ。 [オートスポーツweb 2024年11月07日]