体操・白井健三は、なぜ連覇を逃したのか
先に演技を終えていた加藤は白井の演技について、ラインオーバーによる0・1点の減点のみならず、「印象も悪くなって(実施を評価するEスコアが伸びず)、2位になってしまったのだと思う」と分析した。 応援に駆けつけていたしていた内村航平は、チャンピオンだからこそ審判が厳しく採点したのではないかという見解。「健三のはEスコアの採点が結構厳しいと感じた。日本の採点だったらあれでも一番になれるくらいだと思う。ただ、去年、金メダルを取っているので、それなりに厳しく見られてしまうところもあったのかもしれない」と話した。 さらに考えられるのは、ディフェンディングチャンピオンとしての重圧だろう。白井は「プレッシャーはあまり感じなかったけれど、やっぱり力が入りすぎたことで、4本目の(連続技の)ようなミスになってしまったのかなと思う」と唇を噛む。 技術的に気になるのは、白井が団体総合予選、団体決勝、種目別決勝の3回ともラインオーバーをしていることだ。予選とこの日のミスは同じ技で起こり、団体決勝は別の技(シライ2)でのミスだが、練習の中で修正しきれなかったのはやはり懸案事項として残る。 白井によると、3回ともミスした原因は違っているとのことで、種目別でのミスは踏み切りでゆかを「蹴るタイミングがずれてしまった」(白井)こと。原因が明らかであるだけに「修正できるところです」とは言うが、それでも団体予選からこの日までの1週間の期間で改善しきれなかったのはやはり反省点だ。 加えて、白井のゆかの演技構成は基本的に昨年と同じだったが、ここに問題点が潜んでいなかったかは精査すべきだろう。Dスコア7・4という極めて難度の高い演技構成は、他の選手が真似をできるレベルではなく、無理に上げる必要はないと判断したのは理解できるが、多少は構成を変えて目新しさを見せるべきだったのかもしれない。 あるいは、ライバルたちがDスコアを上げてきていた以上、少なくとも実施の部分では成長を見せる必要があったとも言える。昨年の世界選手権での白井のゆかの得点は予選が16・233、種目別決勝が16・000。今年は予選が16・033、団体決勝が15・766と得点が明らかに下がっていたのは残念で、種目別決勝でもその印象を払拭できなかった。