ラグビー日本代表「頑張らないといけない時に頑張れなかった」理由。W杯の敗因と求められる仕組み作り<RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、ラグビーワールドカップで2大会連続ベスト8進出は果たせなかった日本代表の今後の課題を浮き彫りにした記事だ。 (2023年10月16日公開) =================================
予選プール2勝2敗の結果に終わり、惜しくもラグビーワールドカップ2大会連続でのベスト8進出は果たせなかったラグビー日本代表。決勝トーナメント進出を懸けたアルゼンチン代表との予選プール最終戦では多くの課題も垣間見えた。日本代表の予選プール敗退を受けて、元日本代表の五郎丸歩さんは自身のXで「大きな仕組みを変えない限りこれ以上の発展は日本ラグビー界にはない」と投稿。多くの反響を生んだ。では「大きな仕組み」はどのようにして変えていくべきなのだろうか? (文=向風見也、写真=AP/アフロ)
「頑張らないといけない時に頑張れなかった」理由
今度のラグビーワールドカップで日本代表が決勝トーナメントに行こうが、行くまいが、改善すべき課題は明らかだったといえる。 大会のあったフランス時間で10月8日。参戦する予選プールDの最終戦でアルゼンチン代表に27―39で敗れた。試合終盤、得点した直後に失点するシーンが2つもあった。その翌朝、日本代表の藤井雄一郎ナショナルチームディレクターがオンライン会見でこう語った。 「選手は皆、頑張っているんですけど、頑張らないといけない時に頑張れなかった。その辺の、勝負どころ(での決断や判断)は、(ハイレベルな)経験を積んでいかないと上がっていかない」 2019年の日本大会で初の8強入り。当時のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ体制をさらに継続させてきた日本代表は、ずっと厳しい条件を受け入れていた。 新型コロナウイルスの感染が広がった2020年は、一切の代表活動ができなかった。同年秋に開かれた強豪国同士の大会へは、国内事情を鑑み辞退せざるを得なかった。そのためフランス大会前までにできたテストマッチ(代表戦)の数は、日本大会前の31から17に激減した。 国際舞台に挑む回数が限られたことが、今度のアルゼンチン代表戦のような接戦で苦しむ遠因となったのだろう。だから藤井は、「頑張らないといけない時に頑張れなかった」わけを「経験」と分析したのだ。 さらに痛かったのは、サンウルブズの活動休止だ。 サンウルブズは2016年から国際リーグのスーパーラグビーに参加し、特に2019年までは代表本隊と首脳陣や選手を共有。日本大会に出た選手、コーチの多くがその存在の大きさを振り返る位置づけだった。2020年限りでスーパーラグビーを撤退したのは金銭面の事情からだといわれている。もっとも実際のところは、内部の人間関係が引き金となっていた。それは公然の秘密だった。