はやぶさ2最後のミッション JAXA会見(全文1)わりといい結果が出た
ターゲットマーカーの撮像方法と観測位置
2つ目がターゲットマーカーの撮像方法と観測位置ということになります。ターゲットマーカーは再帰反射性といって、光を当てるとその方向に帰ってくるという特性を持った物体ですので、太陽光を使うことで太陽光を背にして写真を撮ることで、すごく明るい軌道を実現して写真を撮ろうということを実施しました。この特性があるおかげで、ある程度距離があってもターゲットマーカーの撮像というのが期待できましたので、その特性と姿勢と位置をうまく利用することで、より長い期間、周期の長い期間を撮るような観測位置と姿勢で撮りました。これが今回の場合は20キロと30分という撮像間隔の設定になっております。 次が3つ目でして、今まではターゲットマーカーをどう入れてどう撮るかという話だったんですけど、3つ目はターゲットマーカーを下ろしにいくのに精度の良い、探査機自身の制御をしなきゃいけないということなんですね。今回は「自然な運動に沿った精度のよい」低速降下・上昇・ホバリングというのを新たに実現いたしました。これは、われわれ今1年ちょっと小惑星について、「はやぶさ2」でリュウグウを探査してきましたけれども、そのいろんなデータですとか技術的な経験の蓄積が、このような、自然な運動に沿っているけれども精度の良い降下を実現できるという制御の熟練につながって、これが実現できています。
1日に1回の制御だけで降下
自然な軌道運動に沿ったのがどう今までと違ったのかというと、1つは、大きいのは制御の間隔でして、今まで何かクリティカル運用といって降下するときは10分に1回、何か情報を得て、それを基に制御をするということをやっていたんですけど、今回は1日に1回の制御だけで下りていくと。なんですけど、今までやっていたようなBOX-Cとかの観測運用に比べるとかなり精度が良い降下と、そのあとの観測位置への移動と、そこでの軌道保持というのに成功しています。ちなみにこの右下に書いてある分離時の位置誤差、速度誤差っていうのが1つの結果でして、位置誤差は20メーター弱、速度誤差は3.6ミリ・メーター・パーセックというのが今の推定になっております。 ここからが、いろいろ撮れてきた画像を順々にお出ししたいと思います。まずこれが、ターゲットマーカーが周回する様子です。白い点がぐるぐる回っていて、今、左、1つは先ほど言った弧を描くようなところで回っているのと、もう1つは小惑星を通過して、また戻って来るという動画になっています。これ、ちょっと少し加工しているので、この画像の中心付近に実は小惑星が映っていて、それはかなり明るくなっているので、今は黒いマスクを掛けて見やすくしています。 これを1枚の画像にまとめたものが次のページになりまして、この赤い線がターゲットマーカーEの赤道軌道に投入して、丸いところが、真ん中に白い点が映っているんですけども、これが観測に撮像したターゲットマーカーになります。青いほうは極軌道ですね。先ほどちょっと設計のときにお見せした図のように、1つは大きな長い周期を描いて撮れてますし、もう1つのほうは左右を行ったり来たりするような軌道が、これは撮れております。これで無事観測に成功したと言えます。