“ガソリン税”は「法的正当性に疑問」? 税率を下げる「トリガー条項」が“凍結され続ける理由”とは【税理士解説】
「暫定税率」だったはずなのに“50年間”も適用され続けている理由
現在の税率がもともと「暫定税率」だったとすると、なぜ50年間も適用されているのか。黒瀧税理士は、2000年代の「構造改革」との関連を指摘する。 黒瀧税理士:「1974年に『暫定税率』(現在は特例税率)が導入された理由は、当時、道路を整備するための財源が不足しているからというものでした。 もともとガソリン税は、使い道が道路整備・維持管理等のためだけに限られる『道路特定財源』でした。他に『自動車重量税』もそうです。 しかし、21世紀に入ってからの『構造改革』の流れのなかで、2009年以降は『道路特定財源』は廃止され、使い道が限定されない『一般財源』に組み込まれることになりました。 これは2005年に当時の政府・与党が決めた方針に基づくものです。大きな理由は、道路の整備水準が向上し『特定財源税収が歳出を大幅に上回ることが見込まれる』というものでした(※)」 ※参照:国土交通省「道路特定財源の一般財源化について」 そうであれば、本来、道路特定財源(ガソリン税、自動車重量税)は廃止するか、あるいは存続させるにしても税率を元に戻すのが筋ではなかったのか。 黒瀧税理士:「当時の政府・与党は『厳しい財政事情の下、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持する』としました(上記資料参照)。 当時、政治家の答弁でもマスコミの報道でも『道路特定財源』を『一般財源化』する理由として『道路族議員の既得権となっているのはけしからん』などということが強調されていたのを、覚えている人は多いと思います。 しかし、あくまでも法理論上は、ガソリン税を存続させ税率を『1リットル53.8円』とする理由が、『道路の整備のため』から『厳しい財政事情』『環境面への影響』へと差し替えられたことになります」 国会の議決によって法律の改定が行われているので、「租税法律主義」「法律なくして課税なしの原則」(憲法84条)との矛盾抵触の問題は小さいかもしれない。しかし、当時の政府・国会によってガソリン税ないしその税率の存在意義について、根本的な「差し替え」が行われたことには留意する必要があるだろう。