オンラインMTGのフィルターに負けないファンデ&リップで回復を狙う「M・A・C」事業部長 ライバルは、AI?
改めて「M・A・C」というブランドについて
WWD:「M・A・C」の強みは?
リー:専門家による卓越した技術だ。メイクアップアーティストがお客さまに寄り添って、メイクアップの楽しさを教えたり、悩みを解決したりする。コロナ禍では美容部員の接客に制限が多く、自信をなくしたり、スキルを伸ばせなかったりなどの課題を抱えていたので、事業部長着任後すぐに美容部員の教育チームを強化した。店舗での接客やメイクアップ技術のトレーニングなどを行っている。
また、以前は店舗間のつながりが強かったが、コロナ禍には距離が生まれてしまっていた。コミュニケーションの活性化を目指し、今年は全てのリテール・マネジャー(全国の「M・A・C」カウンターの店長)が対面で集まれるイベントを開催する予定だ。
WWD:「M・A・C」を通してどのようなメッセージを届けたい?
リー:「M・A・C」は、“すべての年齢、すべての人種、すべてのジェンダー”を重視している。今でこそダイバーシティー&インクルージョンは当たり前になったが、ブランドが誕生した40年前から、この価値観を貫いてきたことを誇りに思う。全ての女性と少女の平等な権利と、健康で安心な未来をサポートするビバ グラム基金は、「M・A・C」の価値観を象徴する。売り上げは100%、女性や少女、LGBTQIA+、HIV・エイズとともに生きる人々の支援に充てている。創設以来、世界で総額5億ドル(約780億円)以上を寄付し、今も増え続けている。
店の売り上げにならないので開始当初は百貨店の反発などもあったと聞いているが、「M・A・C」の価値観を根気強くコミュニケーションすることで理解してもらえた。現在は全ての百貨店で受け入れられ、積極的だ。6月には“ビバ グラム リップスティック”をリニューアルし、「M・A・C」のメッセージをさらに推し進める予定だ。
WWD:「M・A・C」の脅威は?
リー:日々進化しているAIだ。フィルターをつけるだけで、メイクの必要がない。メイクアップという行為自体を消し去ってしまうほどの力があるかもしれない。現在では人が提案するようなテクニックも、AIが提案する時代が来るだろう。だからこそ、教育・接客をさらに強化したい。