マイナ保険証本格移行 千葉県内医療現場「負担増も」 処方や限度額確認には利便性 使用率低迷、患者手探り
従来の健康保険証の新規発行が2日から停止し、マイナンバーカード保険証への本格的な移行が始まった。従来と比べると、薬の処方歴が分かるなど便利さもあるマイナ保険証。移行に対応する医療現場の多くでは、導入から時間が経過したこともあり、操作には慣れてきている一方で、システムの機能面にいまだ不安が残る現状が、千葉県内医院への取材で浮き彫りとなった。利用率も低迷している。 マイナ保険証はマイナンバーカードと保険証を一体化したもので、2021年10月に医療現場で導入が始まった。薬の処方歴が分かるなど、従来の保険証にない利点がある。ただ、今年10月現在、マイナ保険証利用率の全国平均は15・67%。県内でも、全国平均をわずかに上回る16・02%にとどまっている。 従来の健康保険証は、国が今月2日からと決めた新規発行停止以降も、有効期限が2025年12月1日以内の場合は、そこまで継続して利用できる。マイナ保険証を利用しない意向の人なども、現在使用中の健康保険証の有効期限が切れた後は「資格確認証」を利用して、健康保険を適用できる体制になっている。 千葉市稲毛区の天台歯科医院ではマイナ保険証を昨年春から導入しているが、患者の利用率は1割に満たないという。石毛清雄院長(69)は「(患者に)高齢の方が多く、操作を使いにくく感じる人や(紛失の心配などで)マイナンバーカード自体を持ち歩くのをためらう人もいる」と説明する。 同医院では時折読み込み機械が動かなくなるなどのトラブルもあるが、操作自体には慣れてきた。従来の保険証では不可能だった患者ごとの高額療養費制度の自己負担限度額が確認できるなど、メリットもあるという。しかし、機能面での問題が浮上している。 マイナ保険証を読み取っても、国民健康保険加入者と後期高齢者医療制度加入者の保険証有効期限がマイナ保険証のオンライン資格確認システムに表示されないという。医院側で手打ちで入力しても、次の来院時にマイナ保険証を読み込むと消えてしまう。患者の氏名についても、同じ漢字でも読み方が違うと表示されないことがある。石毛院長は「手打ちで書き換える作業など、従来の保険証と比べると負担は増えた。比較的患者1人に時間をかけられる歯科だと、こうした作業に対応できるが、内科などでは(もっと)大変ではないか」と指摘する。 今月3日、マイナ保険証を初めて使った同医院患者の70代夫婦は「思ったより簡単だった。(顔認証をする際に)眼鏡を着けたままで良いのか分からなかったけれど、着けたままでも認証された」とシステムの操作性を評価。一方で、「今までの保険証だと月に1回渡せば良かったけれど、マイナ保険証では毎回読み込まなきゃいけないのは大変」と話した。 県内の公立病院でも、導入から一定期間が経過してもなお、マイナ保険証の利用は浸透していない。県がんセンターでは、22年1月からマイナ保険証を導入しているが、今年10月のマイナ保険証利用率は16%だった。 県北西部の公立病院は21年11月から取り入れ、今年9月の診療件数のうち、利用率は13%だった。導入当初は説明や案内に時間がかかり、ここ最近はマイナ保険証発行が広まったことで増えてきた利用者の動線確保に苦慮しているという。