老後の人間関係を充実させるために「善意でもやるべきではない」こととは?
人生のベテランらしい「スマートな割り勘」を身につけよう
男性と女性がお茶を飲んだり、食事をしたりしたとします。恋人とか夫婦なら話は別ですが、ただの友だちや知り合いならば、自分が食べたものは自分で支払うのが当然でしょう。なかには、そうしたシチュエーションでは男性がお金を支払うのが当然と思っている人もいるようですが、そうした関係からは「対等な人間関係」は生まれにくいと考えるべきだと思います。 前述のように、老後の友だち付き合いは割り勘が原則。ただし割り勘の仕方は簡単なようで、案外難しい。だからこそ「割り勘はスマートに」を心がけるのは大人のマナーといえるでしょう。 男性と女性で食事をした場合は、お店の格にもよりますが、女性がそれなりのお金を男性に手早く渡し、「お会計、お願いできますか」などと言えばスマートでしょう。あるいは小声で「ここはいったん、お願いします。外で精算させていただきますね」とする方法もあるでしょう。 先日、銀座にある高級フランス料理店でランチをしたときのこと。こうしたお店のランチタイムには、中年以上の女性が連れだって食事を楽しんでいる姿をよく見かけますが、その日はさすがに啞然としてしまいました。テーブルの上でそれぞれが財布を片手に、携帯電話の計算機を使って、自分が支払う分を計算し始めたのです。 決して安くはない金額ですから真剣になる気持ちも分かりますが、まだほかにランチを楽しんでいるお客もいるのです。これはあまりカッコよくありません。お店の人も、困惑の表情を隠しきれない様子でした。こうした格式のあるレストランや料亭などでは、誰か一人がまとめて支払い、別の場所で精算するのがスマートでしょう。 金額が大きくなるなら、あらかじめ支払う役の人にお金を渡しておけばいいのです。一般的なレベルのレストランならレジに行き、「会計は一人ひとり、別々にしてください」と声をかけ、自分が食べたものを言えば、ちゃんと対応してくれるはずです。 あまり人数が多い場合や、誰が何を何杯飲んだか分からなくなってしまった場合は、「一人3000円ずつ」などと大ざっぱな割り勘方式でいいと思います。細かなお釣りが出たら、飲む量が少なかった人に「あまり飲んでいないようだったから」と渡して終わり! でよしとしましょう。 あるいはレジの寄付金箱に入れるのもいいと思います。お金の支払い方は、その人の心遣いや品性をあらわに示すものです。「さすがに人生のベテランは違うな」と言われるような、スマートな支払い方をして若い人の範となりたいものですね。
保坂隆(精神科医)