「護衛艦輸出こんどは成功させるぞ!オー!」政府の気合が絶対必要なワケ 夢の1兆円プロジェクト 豪州向けの“負け戦”から学ぶ
同じ轍を踏まないために
その後オーストラリアは、アメリカ、イギリスとの軍事同盟「AUKUS」の一環として原子力推進の攻撃型潜水艦へと導入方針を変更したため、フランスの提案も採用には至っていません。ただ、勝利目前と見られていた商戦でフランスに敗れたことは、やはり日本にとって「苦い経験」だったのでしょう。 コリンズ級後継艦の受注が獲得できなかった理由は複合的なものですが、オーストラリアが雇用の確保などの観点から国内での建造を希望していたにもかかわらず、海上自衛隊の一部が防衛機密の保護を理由に難色を示し、完成艦の輸出にこだわったことも、不利な要素の一つになったのではないかと筆者は思います。 そうりゅう型潜水艦の建造は三菱重工業と川崎重工業の2社が行っており、オーストラリアにそうりゅう型をベースとする提案をするであれば、両社が足並みを揃える必要がありました。しかし、三菱重工業が積極的であったのに対し、川崎重工業はやや及び腰だったという印象を筆者は受けましたし、それも商戦で不利になったのではないでしょうか。 アンザック級後継艦の商戦で、官民合同推進委員会がこれらの問題をどこまで解決できるのかは未知数ですが、本気で商戦に勝ち抜き、受注を得たいのであれば、これらの「苦い経験」を無駄にしないで欲しいと思いますし、官民合同推進委員会はそのためにあると筆者は思います。
竹内 修(軍事ジャーナリスト)