社長のパワハラで退職を決意「せめて将来分の給料をもらいたい」 逸失利益として認められる?
もっとも、パワハラや退職勧奨を受けて、労働者が退職届を提出した場合、自己都合退職を選択したのであり、退職を余儀なくされたとはいえないとして、逸失利益の損害が否定される場合もありえます。また、逸失利益の損害は、再就職可能な期間に制限される場合もあり、1年以上の逸失利益が認められるのは難しいと考えます。 パワハラを原因として退職した場合、不就労期間に対する逸失利益が認められた裁判例は多くはありません。 今回のケースでは、会社から退職を遺留されたにもかかわらず、相談者が自ら退職を選択していますので、逸失利益の損害が否定される可能性はあります。 ――会社側の責任追及で留意すべきことは何でしょうか。 社長からの恫喝の内容を具体的に証明できなければ、損害賠償請求が認められない可能性があります。社長からの恫喝の録音がない場合には、恫喝を受けたことの証明は難しいです。 また、仮に、恫喝の証明に成功したとしても、逸失利益は否定される可能性があり、慰謝料の金額も低額に認定される可能性があります。 そのため、弁護士に依頼して損害賠償請求する場合には費用対効果をよく検討し、認められる損害賠償額よりも弁護士費用の方が多くならないように気をつける必要があります。 【取材協力弁護士】 徳田 隆裕(とくだ たかひろ)弁護士 弁護士法人金沢合同法律事務所 日本労働弁護団、北越労働弁護団、過労死弁護団全国連絡協議会、ブラック企業被害対策弁護団に所属し、労働者側の労働事件を重点的に取り扱っています。ブログ(https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog)、YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCWJQX9xTgXZegEOHZUidsdw)で労働問題について情報発信をしています。