「自分は何者」そこまで考える必要ない?虐待、いじめ、リスカ傷痕も大切な一部 「死んではダメ」手差し伸べた恩人のため「もう一度働きたい」
▽「同じ人間と知って」 Yさんは離婚後の27歳の時、周囲にトランスジェンダーだとカミングアウトした。友人に「これが自分だと受け止めてほしい」と言えた時、とてもすっきりしたという。明るい髪色にたくさんのピアス。これも自分のアイデンティティーを示すため。何度もリストカットした傷痕も自分が生き残ってきた証、大切な自分の一部だ。隠すことはしない。 母とは何年もの間会っていない。祖父母とも距離を置き、年に数回、元妻と暮らしている娘を交えて会う程度だ。 現在のパートナーの女性はYさんについて「芸術が好きなところなど、お互いに通じ合うところがあって。自分にとって未知のものを持っていて、すごく気になるというか、一緒にいて楽しい」と話す。 ダイハツへの抗議活動では、合同労働組合の後押しを受けて、自身に対するハラスメントや障害者差別についても認めて謝罪するよう求めている。 活動を通して社会に伝えたいことは何か。
「国籍、民族、ジェンダー、障害。『自分は何者なのか』と悩んできたが、周囲からの『そこまで考える必要ないんちゃう?』という言葉が苦しかった。当事者にしか分からない葛藤があり「自分は普通でない」と苦しんでいる人がたくさんいる。そういう人たちを知って、いろんな違うところがあるけれど同じ人間なんだということを知ってほしい」 ▽ダイハツのコメント 上司や関係者へのヒアリングなど事実関係を確認したが、(Yさんの)訴えにあるようなパワハラ(障がい者虐待・差別)といった事実は認められませんでした。契約期間満了に伴う雇用契約終了は、勤務態度や職務遂行能力を踏まえ、総合的に判断したものです。この件について、是正勧告書・指導票等による行政指導を受けた事実もありません。 ▽取材後記 「ダイハツはパワハラを謝罪してください」。森友学園問題の端緒となる裁判を起こした大阪府豊中市の木村真市議から、「今度こんな抗議活動行うので来てください」とチラシをもらった。ちょうど認証不正でダイハツが揺れているとき。声を上げているYさんに一度話を聞いてみようと、2月、本社前に向かった。