「証券会社の窓口で勧められるがまま購入」悲惨な経験で“投資”がトラウマになった山口真由さんの恐怖心を取り除いた一冊(レビュー)
「ウシが殺す人間の数はサメの4倍」の意味
さて、自分自身がいかに投資における「敗者」だったのかという事実を本書によってまざまざと突きつけられた。だが読後感は思ったよりもずっといい。確かに、20代からこの方法を継続していれば、私のポートフォリオは見違えるようだっただろう。だが、本書の最後の警句こそが肝要である。本質的なリスクは「サメ」ではなく、「ウシ」にある。市場の暴落や景気後退といったリスクはわかりやすい。そういうサメを見つけたらビーチは直ちに遊泳禁止になるだろう。だが、「ウシが殺す人間の数はサメの4倍である」という意外な事実を筆者は提示する。理由をあれこれ並べて投資をはじめないことのほうが、リスクとしてはより大きいのだ。 投資に関しては、私は自分のお金のみならず、メンタルもすり減らした。だがそれは自らの財布を握りしめて市場の門をくぐったがゆえだ。いまならよくわかる。これ自体が得難い経験だった。よく挑戦した。さあ自信を持って立ち上がり、再び市場の扉を叩こうといま決意を新たにする。 [レビュアー]山口真由(ニューヨーク州弁護士) 1983年生まれ。東京大学法学部卒業後、財務官僚を経て2015年まで弁護士として法律事務所に勤務。2016年にハーバード・ロースクールを卒業し、ニューヨーク州弁護士登録。著書に『いいエリート、わるいエリート』『ハーバードで喝采された日本の「強み」』など。 協力:新潮社 新潮社 Book Bang編集部 新潮社
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