「まんが道」「バクマン。」「これ描いて死ね」 昭和と令和「漫画家たちの生態」はどう変わったか
■令和の名作『これ描いて死ね』 令和に入っても漫画家マンガ人気は衰え知らず。多種多様な作品が登場してくるなかで、王道たる2人組パターンの名作としてご紹介したいのが、とよ田みのる『これ描いて死ね』(2021年~)である。 舞台は伊豆諸島のとある島。マンガ好きの高1女子・安海相(やすみ・あい)は、彼女にとってバイブルとも言える『ロボ太とポコ太』の作者・☆野0(ほしの・れい/長らく休筆中)が新作同人誌をコミティア(国内最大級の創作同人誌即売会)で頒布すると知り、単身本土に渡る。初めての東京に右往左往しながらもたどり着いたビッグサイト。広い会場にひしめく大勢の人々が、“自分で描いたマンガを売っている”ことに衝撃を受ける。
「そっか…漫画って、自分で描けるのか」と目からウロコの安海。しかも、お目当ての☆野0のブースにいたのは、なんと彼女が通う学校の国語教師・手島零(てしま・れい)だった。マンガばかり読んでいる安海に「漫画なんてなんにもなりません!」「端的に言えば全て嘘なのです」などと説教していた手島だが、マンガを描く喜びも苦しみも知ったうえでの発言だったのだ。 驚きのあまり「先生、私に漫画を教えてください」と弟子入り(? )志願するも、手島は「嫌です」を繰り返し取りつく島なし。しかし、島に帰った安海は同級生の赤福幸(あかふく・さち)と2人で漫画同好会を作りたいと直訴する。そこで手島が出した条件が、「来週までに漫画を一本描くこと」だった。
1週間後、安海がノート1冊分描いてきたマンガは、ヘタクソでデタラメでツッコミどころ満載のシロモノ。が、にじみ出る創作の喜びと安海の満足げな笑顔に、手島は思わず感涙してしまう。かくして同好会設立は認められ、手島が顧問も引き受けることになったものの、設立には最低3名の会員が必要という。 そこに加わったのが、老舗旅館の娘で美術部所属の藤森心(ふじもり・こころ)だった。諸星大二郎を愛読するガチのマンガ好きで、絵は抜群にうまい。引っ込み思案で自分の気持ちをうまく伝えられない彼女だったが、安海のマンガに勇気づけられ、それを自分なりに描き直してみたマンガがきっかけで仲間となる。ここに、安海の原作を藤森が作画するという合作コンビが誕生した。