「まんが道」「バクマン。」「これ描いて死ね」 昭和と令和「漫画家たちの生態」はどう変わったか
中3になったばかりの真城最高(ましろ・もりたか/通称サイコー)は、将来の夢もなく、退屈な日々を送っていた。クラスに好きな女子はいるが言葉も交わせず、絵は得意だがそれを仕事にできるとは思っていない。そんなある日、サイコーの絵のうまさに気づいた学年一の秀才・高木秋人(たかぎ・あきと/通称シュージン)が、「俺と組んでマンガ家になってくれ」と誘ってくる。 亡くなった叔父が漫画家で、苦労を知っているサイコーは即座に却下。が、シュージンの口八丁手八丁に乗せられ、好きな女子との約束も加わり、漫画家デビューどころか「18歳までに自分たちのマンガがアニメ化されること」を目標としてバク進することになる。
この手の物語では、マンガを描くことに親が反対するのが定番だが、本作ではあっさりOKが出る。しかも、叔父の仕事場を自由に使っていいことになり、叔父の遺したネームや資料、子供にとっては高価な道具類も好きなだけ使えるという恵まれすぎた環境で、2人は大ヒット漫画家となるべく、寝る間も惜しんで創作に励む。 右も左もわからないまま情熱だけで突っ走った『まんが道』の2人とは違い、『バクマン。』の2人は豊富な情報量と冷静な分析力を持っている。それでも、2人で力を合わせて作品を完成させる点は変わらない。初めての持ち込み用の作品を完成させて、「絵はいいけど俺の話がな」「話はいいけど俺の絵がな」とお互いに言い合うシーンは胸アツだ。
作中に登場するマンガのハウツー、編集者との関係などの描写もリアルだった。『スラムダンク』を読んでバスケを始めたり、『ヒカルの碁』で囲碁を始めた少年が多数いたのと同様に、本作を読んでマンガを描き始める少年が増えたのは確実で、その少年たちはまずジャンプに投稿しただろう。そのへんの戦略も含め、さすがジャンプと言うしかない。ラブコメ要素もからめてスピーディに展開する物語は、大人にとっても読み応え十分だ。