【速報】『紀州のドン・ファン』元妻に無罪判決 ”状況証拠”重ねた検察、覚醒剤の摂取等めぐり無罪主張 和歌山地裁
資産家男性の不審な死から6年半あまり。殺人の罪に問われた元妻・須藤早貴被告に12日、和歌山地裁は無罪判決を言い渡しました。 酒の販売業や貸金業を展開し、一代で巨額の財を築いた和歌山県田辺市の野﨑幸助さん。自宅のタンスの中などに、多額の現金や貴金属を自宅に置いていたことでも知られています。奔放な女性遍歴から、スペインの伝説上のプレイボーイになぞらえた自伝のタイトル「紀州のドン・ファン」とも呼ばれるようになりました。
■55歳離れた若妻 結婚3か月後に不審死
その野﨑さんが2018年2月に結婚したのが、55歳も離れた須藤早貴被告でした。しかし結婚のわずか3か月後、野﨑さんは不審な死を遂げます。死因は、急性覚醒剤中毒でした。 遺体には注射の痕がなく、警察は野﨑さんが覚醒剤を口から摂取したとみて、自宅などから大量のビールの空き瓶を押収したり、事件の直前に死んだ愛犬「イブ」の死骸を庭から掘り起こして調べたり、しかし捜査は難航します。 そして3年後、妻だった須藤被告が逮捕されます。直接的な証拠は欠いていましたが、死亡当日に野﨑さんと長時間2人きりでいた点や、インターネットで覚醒剤について検索した履歴があり、密売人と接触していた点など、数々の状況証拠が判断根拠となりました。
■須藤被告「「私は社長を殺していません 無罪です」
今年9月に始まった裁判。須藤早貴被告は「私は社長を殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません。無罪です」と全面的に無罪を主張しました。 被告人質問で須藤被告は、初対面で野﨑さんから現金100万円を渡され、プロポーズを受けた際の心境を「お金をパッとくれる人だからラッキー。上手く付き合っていこうと思いました」と振り返っています。
■野崎さんは「『死にたい』と言ってました」
いっぽう野﨑さんの死については、生前に自殺願望を口にしていたと主張します。 須藤早貴被告「(野﨑さんは)愛犬のイブが死んでから『死にたい』と言ってました。従業員の前でも言ってました。『もう自分も死んでしまいたい』と。」
■注目される「覚醒剤」めぐるやりとり
覚醒剤は、野﨑さんが亡くなる1か月半前に覚醒剤を手に入れようと密売人に接触。田辺市内で10万円を支払い、直接受け取ったことは認めたものの、そもそも購入は野﨑さんから頼まれ、受け取った物も本物ではなかったと訴えました。 須藤早貴被告「『ダメだから(=性的な満足を得られないから)覚醒剤を…』と言われました。『お金くれたらいいよ』と冗談で言ったら、バッグから20万円を出して渡してきました」「(野﨑さんに渡した日の)翌日の夕食の時に、『使い物にならん、ニセモノや』『もうお前には頼まん』と言われました」 しかし、須藤被告は起訴される前、「野﨑さんから覚醒剤の話が出たことはない」などと供述していました。この点を検察官が「(捜査段階で)野﨑さんから購入を頼まれたと言わなかったのはなぜ?」と問い詰めると。 須藤被告「言ったらどうなるか分からないから」 検察官「というのは?」 須藤被告「現にいまこうして、(本物の覚醒剤ではなく)氷砂糖を買っても逮捕・起訴されているわけですから。当初から殺人者扱いでしたし、怖くて言えませんでした」
■「あのタイミングで死んだせいで私は何年も人殺し扱い」
被告人質問の最終日には、野﨑さんへの“恨み節”まで見せました。 女性検察官「野﨑さんが死んだことについてどう思う?」 被告「目の前にいるなら、文句は言ってやりたいぐらいです」「もうちょっと死に方を考えてほしかったというか、社長(野﨑さん)があのタイミングで死んだせいで私は何年も人殺し扱いなので」 検察が「遺産目当ての殺人は、強盗殺人と同程度の悪質さ」と糾弾し、無期懲役を求刑した中で、きょうの判決を迎えました。