転換点の「原子力発電所」、再稼働目指す青森の今
工事再開へ東電に要望書
青森県内では東北電の東通、Jパワーの大間のほか、東京電力ホールディングス(HD)の東通原発(東通村)計画がある。東電の東通原発は本体工事に着工した直後に東日本大震災が発生し、工事は止まったままだ。 11月25日、東通村の畑中稔朗村長らは、東電HDの小早川智明社長に早期の工事再開を求める要望書を手渡した。「当村の存亡に関わる非常に重要な課題だ。商工団体からは工事再開を求める悲痛な声が上がっている」と地元企業の厳しい経営状況を訴えている。 この1、2年で電力産業を取り巻く状況は大きく変わった。電力需要は従来の人口減少に伴う減少予想から、データセンターや人工知能(AI)用途で増える予想となった。ロシアとウクライナの紛争に伴う燃料価格の急騰や風力や火力発電設備の価格上昇により、エネルギーの安定性や安全保障対策の重要性に注目が集まった。 現在は撤回したが、今秋、独フォルクスワーゲンがエネルギーなどのコスト上昇を理由に国内工場の閉鎖を打ち出したことは記憶に新しい。建設後の運転コストと発電量が安定した原発復活の動きは、こうした世界情勢とつながっている。 再稼働には設備の安全審査の合格と地元との合意が必要なため、再稼働が一気に進むとは考えにくい。福島第一原発の事故の記憶はそう薄れはしない。一方、安全運転には運転員の技術力や部品供給網の維持も欠かせないが、これは設備停止期間が長引くほど不利になり、運転のハードルは上がる。エネルギー問題が注目される今、さまざまな視点で考える必要がある。