中森明菜が「陰」なら松田聖子が「陽」…音楽家・武部聡志が明かす「最も優れた女性歌手の名前」
中森明菜が「陰」なら、松田聖子は「陽」
――武部さんは、80年代のトップアイドルだった松田聖子さんとも一緒に仕事をしています。当時の聖子さんの印象は? ちょうど聖子さんがデビューした1980年だったと思います。『夜のヒットスタジオ』に彼女が初出演した際、初めてスタジオでお見かけしました。どこか悲しさが漂う中森明菜さんが「陰」だとしたら、聖子さんは間違いなく「陽」でしょうね。持って生まれた明るさが声質にもよく表れていました。 仕事でご一緒したのは、86年のアルバム『SUPREME』のときです。出産のため一時アイドル活動を休止していた時期にリリースしたのがこのアルバムで、『瑠璃色の地球』を含め5曲のアレンジに携わりました。 ――どのような経緯で手がけることになったんですか? 1985年に発表した斉藤由貴ちゃんの『卒業』がきっかけです。この曲はミリオンヒットというわけではなかったんですが、おかげさまで評価いただくことが多くて。 聖子さんの曲の歌詞の多くを手がけていた松本隆さんも当時気に入ってくれたようで、「聖子の休業中にアルバムを作りたいから是非参加してほしい」とお声がけいただいたんです。憧れの人からの依頼だったので、そりゃあ嬉しかったですよ。ただスケジュールの都合で5曲しかアレンジできなかったんですけどね。 ――特に『瑠璃色の地球』はシングルになっていないにも関わらず、ファンが多いですよね。作曲は井上陽水さんの『少年時代』も手がけた平井夏美さんで、歌詞は松本隆さんです。曲も、歌詞も、かなり壮大といいますか。 デモの段階ですごく良いバラードだなと思ったんですが、あとで完成した隆さんの歌詞を目にして感嘆しました。これが松本隆マジックか、と。 当時の隆さんは、母になった聖子さん、つまり人生のステージが変わった彼女を前面に出したいと言っていて、実際の歌詞にもそれが表れています。いままで歌ってきたような等身大のラブソングではなく、より大きな愛がテーマになっています。