SNSを使って巧妙に仕組まれた新生児の連れ去り。衝撃的コミックエッセイの原作者に聞く
ある日突然、優しかったパートナーの態度が豹変。突然子どもを連れ去られて家を追い出されたら、あなたならどうしますか…? 【マンガ】『産後10日でホームレス 浮気夫に家も息子も奪われました』を最初から読む 『産後10日でホームレス 浮気夫に家も息子も奪われました』という衝撃的なタイトルのマンガをご存知でしょうか。出産直後の身体ひとつで突然家から締め出され、ホームレスとなってしまった主人公。夫の突然の豹変のウラには、計画的に仕組まれた新生児の連れ去り計画がありました…。 この衝撃的な作品の原作者・あいかさんにお話を伺いました。 ■『産後10日でホームレス 浮気夫に家も息子も奪われました』あらすじ 主人公の翔子はバツイチ。3歳の娘の桃香を連れて1年前に同じくバツイチの隆一と再婚しました。再婚からまもなく翔子は妊娠し、親子3人で赤ちゃんの誕生を心待ちにしていました。 しかし、隆一との間にできた息子・雄太の出産からわずか10日後。翔子は突然、隆一から離婚を一方的につきつけられて、娘とともに家の外に締め出されてしまいます。夫の突然の心変わりに、翔子は理解が追いつきません。 まだ乳飲み子の息子・雄太を奪われたまま、桃香とともに家に帰ることができずホームレス状態に陥ってしまった翔子は、お寺の住職夫婦に助けられてどうにか一晩を過ごします。その後、ひとまず兄の家に身を寄せ、翔子は夫の隆一から息子を取り戻すことを決意します。 調べていくうちに、隆一はかなり前からSNSで翔子をDV妻に仕立て上げるウソの投稿をしていて、計画的に雄太を連れ去ったことが明らかになっていきます。どうやらそのウラには隆一の前妻・ミソノの存在があるようでした。 雄太の連れ去りは、子どもが出来ず離婚した隆一とミソノと結託して仕組んだことのように見えましたが、そのウラにはまだ予想外の事実が…。翔子は雄太を取り戻すため、弁護士や元夫、お寺の住職夫婦など周囲の助けを借りながら奮闘します。 ■原作者・あいかさんインタビュー ──タイトルの『産後10日でホームレス』というフレーズが衝撃的です。主人公の翔子は産後10日で夫に家を追い出され、乳飲み子を奪われてしまいます。冒頭からインパクトのある描写が続きますが、このときの翔子の心情はどのようなものだったとお考えですか? あいかさん:途方に暮れる気持ちと、「ふざけんなよ」って気持ちと、「裏切られた?」という気持ちが複雑に絡み合っている感じでしょうか。ちょっと一言では言い表せない感じでしょうね。 ──知らないうちに夫のSNSで「暴力を振るう毒嫁」に仕立て上げられていた翔子。隆一の検索避けの方法も巧妙で、SNSで嘘の証拠を作られてしまうというのは恐ろしい話だと思いました。あいかさんが考えるSNS対策などありましたら教えてください。 あいかさん:個人の日記なども証拠になる以上、SNS上での発言なども証拠になるのは仕方ないことではあるんですが、日記と違ってSNSは拡散しますからね。一度ネット上に公開されたものを完全に削除すると言うのはとても難しい。今は誰でもいつでも写真を撮って投稿できる時代ですからね。とりあえず私自身と家族は、ネットリテラシーを高める努力をし続けるしかないのかなと思います。 ──翔子は、離婚した前夫や兄、助けてくれたお寺の住職夫婦など周囲の人々に助けを求め、息子を取り戻すために動き出します。弁護士とどのように信頼関係をはぐくんでいったのか、親権問題にどのようにアプローチしていくのか…、このときの翔子の気持ちを教えてください。 あいかさん:最初はとにかく全員の善意を信じるしかない、と言う状況ですね。自分がどれだけ言葉を尽くしても、信じてもらえるかどうかわからない状況で、それでも自分は間違っていないんだと主張し続けた翔子は、とても勇気のある人だと思います。 ──隆一の前妻・ミソノには強烈なキャラクターの母親がいて、彼女が事件のキーパーソンとなっています。彼女についても感想を伺いたいです。 あいかさん:自分がこうされたんだからあなたたちもこうされるのは当たり前よね?という価値観の持ち主ですね。他人を自分の価値観に当てはめてどうこうしようと思ってはいけないな、といういい見本かと。 ──隆一の前妻・ミソノも、この母親に「出来損ない」と言われて育ち、母親の言いなりになっていることがわかります。いわゆる「毒親」と子どもの関係ですが、この「毒親」について思うことがあれば教えてください。 あいかさん:過干渉・無関心、いろんな形の「毒親」がいると思いますが、そういう人って自分の事を客観視出来ていないのかなと思いますね。出来ていないというか、するだけの余裕がないのかもしれない、と。これも核家族の弊害ではないでしょうか。自分の両親だけではなく、色々な大人が色々な価値観を持って生きてるんだ、ということを子供にはなるべく早く知って欲しいし、親の側も子供を一人の人間として尊重する気持ちを持たねばいけないなと思います。 * * * 子どもの連れ去り、SNSでの偽装工作、毒親問題…。予想の斜め上の行動を取るミソノ親子や隆一の言動にハラハラしつつも、主人公を支える周囲の人々の真摯な優しさに勇気づけられる物語です。 取材=ナツメヤシ子/文=レタスユキ