アジア杯、対戦国の記者が振り返る。「日本がこれほどヒドいとは......」
日本在住歴があり、現在は香港をベースにアジアのサッカーを取材している北アイルランド出身のジャーナリスト、マイケル・チャーチ氏はこう切り出した。 「大会前に日本がベスト8で消えると言われたら絶対に信じなかった。でも、初戦からの不安定な戦いを間近で見ていたので、ベスト8で敗れたときに驚きはなかった」 そして、こう続ける。 「日本が早期敗退した理由はいくつかあるが、慢心が最も大きな要因だと思う。イラクやイランに負けただけでなく、初戦のベトナム戦から中盤で後手に回り、守備のもろさを見せたシーンがあったからね。 フィジカルコンタクトの強い中東勢にどう対応するのか、長年の日本の課題に対する答えをいまだに見つけられていなかった。 ただ、どんな体たらくだったとしても、多くの専門家は日本がアジアナンバーワンであると考えていただけに、なぜあれほどヒドい戦いになったのか、森保一監督には説明責任がある。親善試合でいくら連勝してもなんの意味もない。大会の結果がすべてだということを認めるべき」 経験不足を露呈したGK鈴木、コンディション不良の板倉 滉を起用し続けた森保監督の采配にも疑問を感じたというチャーチ氏。だが、最も期待を裏切ったのは、大会中に右サイドバックのポジションを失った菅原由勢だという。 「大会前の親善試合では、とてもいいプレーをしていたのに......。ベトナム戦やイラク戦でのパフォーマンスは、まるでポジションの適性がないと感じさせるほどだった」 今回のアジア杯ではベスト4に中東勢が3チーム残り、東南アジアの2チーム(タイ、インドネシア)が決勝トーナメントに進むなど、アジア全体のレベル向上が日本の苦戦の理由だとする声もある。 「伝統的に西アジアのチームは、中東で開催される大会で結果を出してきた。彼らには東アジア勢にはないフィジカル的な強さがあるのも確か。 加えて、26年北中米W杯のアジア出場枠が8.5枠に拡大することで各国が強化に力を入れ、地域全体のレベルが向上しているのは間違いない。海外生まれの選手を母国に招集した例もいくつか見られた。 私が初めてアジア杯を取材した1996年大会に参加した選手の中でUEFA(欧州サッカー連盟)加盟国でプレーしていた選手はわずか3人だったのが、今大会では117人に増え、そのうち40人がイングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスのいわゆる5大リーグでプレーしている選手だったというデータもある。 ただ、その5大リーグに所属している選手が最も多いのが日本だから、それは日本の〝失敗〟の言い訳にはならないが」 森保監督は彼らの声をどう受け止めるのか。 取材・文/栗原正夫 写真/共同通信社