豪雨対策に「もう1本川を作る」 東京の地下河川計画が動き出す
■なぜ?復活した「地下河川」
2010年から会議の場で語られることがなかった「地下河川」。ところが、10年以上たって復活したのだった。小池知事の2021年の所信表明演説。 「環状7号線地下広域調節池について、将来の地下河川化を含めて、その延伸の検討を進めてまいります」 現在、行われている工事で13.1キロまで伸ばす予定の地下調節池をさらに伸ばして「地下河川」にするというものだった。1985年に鈴木知事が打ち出した「地下河川」が36年ぶりに復活した瞬間だった。 都は去年12月に防災の中長期計画「TOKYO強靭化プロジェクト」をアップグレードした。そこには「環7地下広域調節池等を連結し、海までつなぐ地下河川の事業化に向けた取組に着手」と記載されている。 知花教授はその理由について、 「20年に一度の大雨に備えようとすると、東京23区は一時間75ミリの非常に激しい雨に備える必要があります。さらに今後の気候変動を考えると85ミリの雨をどうさばくかが大事になります。川は一時間50ミリの雨を流す能力があるので、残り35ミリを調節池と地面の染み込みで対応できればいいが、まだ足りないときに何をするのかという議論になる」 と説明する。 近年は毎年のように「50年に1度の雨」という言葉を聞き、実際に大規模水害が発生している。2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨と甚大な被害が出た。2019年の台風19号では、福島県郡山市で普段は水がほとんどない小川が増水し、車が流され乗っていた親子3人が死亡した。 東京にいつ線状降水帯が発生してもおかしくはなく、豪雨対策は最優先の緊急課題となった。 都は「TOKYO強靭化プロジェクト」の中で、河川整備や江東5区の低地のかさ上げなどの水害対策費用として2040年代までに7.1兆円を支出するという。
■地下河川と水害の損失
私は、この1年で3カ所の地下調節池を取材した。その1つ、目白通りの下の「白子川地下調節池」では2019年の台風19号でトンネルの9割まで水が貯まった痕がくっきりと残されていた。調節池に貯めた水は49万立法メートル。もし、この大量の水が白子川や石神井川に流れていた場合、水があふれて大洪水になっていただろう。 地下河川はどんなルートで海につながるのか。 私は環状7号線に沿って海まで15キロ進むのではないかと予想している。用地買収が最低限で済むからだ。とはいえ、最新の工事の1キロ毎の事業費を単純計算で15倍すると3000億円以上になる。このコストを高いとみるか安いとみるかは、将来起きる水害の経済損失を想像するしかない。20年に1度起こりうる豪雨による損害を考えると私は安いと感じる。 さらなる発展を目指す東京の未来への投資として「地下河川計画」を進めるため、また、再び“タブー”としないためにも、必要なのは健全な財政運営だと考えている。
テレビ朝日