ドイツのサステナブルな街を巡る⑤ 華麗なる貴族の生活を疑似体験! 築1000年超の古城ホッピング
環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2023で世界4位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、ドイツのサステナブルやSDGsをレポートします。ドイツには数万もの古城があり、うち約3000が美しく保たれ、一般開放されています。城を維持するには莫大な費用がかかるため、各城の管理者はそこを魅力的な観光スポットして入場料などの収入を得るため、さまざまな工夫をしています。今回はザクセン州ケムニッツ近郊にある、文化的価値にすぐれた古城をいくつか紹介します。(上写真はロクスブルク城)
『グランド・ブタペスト・ホテル』のロケもおこなわれた「ヴァルデンブルク城」
ケムニッツ中心部から西へ、車で約30分、公共交通機関で1時間半ほどのところにあるヴァルデンブルク城。その歴史は、12世紀までさかのぼる。再建と拡張が繰り返され、第一次世界大戦前は「ドイツでもっとも近代的な城」とされており、セントラル・ヒーティングシステム、電気、電話、エレベーターなどが完備されていたそうだ。 宮殿の1階に多数ある壮麗な部屋は、多くのドキュメンタリーや映画のロケ地として使用されてきた。なかでも4 つのオスカー賞を受賞したハリウッド映画『グランド・ブダペスト・ホテル』は有名だ。ボールルーム、ブルーホール、イエローホール、中国ふうの部屋、鏡の部屋など、さまざまなスタイルの部屋に、当時の調度品がそのまま保存されている。城主一族の家系図や人物像の解説などもあり、豪華な貴族の生活ぶりが感じられる。第二次世界大戦が終了した1945 年には城の取り壊しが計画されたが、1948~1998年には医療施設として活用され、解体を逃れた。
中世後期そのままの姿で地下牢や拷問部屋も!「ロッホリッツ城」
ケムニッツ中心部から、北へ車で約40分、公共交通機関で1時間あまりのところにある築1000年以上のロッホリッツ城は、南北に流れる川沿いの高台にそびえ立っている。10世紀後半、帝国城の跡に、中世から20世紀にかけてドイツのザクセン地方、テューリンゲン地方を支配し、大領邦をつくった貴族・ヴェッティン家が、壮麗な城を築いたのだ。同家系はいまも続いている。ドイツでも稀なことだ。 城は、巨大な塔や木製の天井、部屋にいたるまで、中世後期そのままの姿を保っている。かつてのにぎわいを再現するようにディスプレイされたキッチンに入ると、おいしそうな料理の匂いが漂い、コックやメイドたちの動き回る音まで聞こえてくるような気がする。 長い廊下、地下牢、拷問部屋(!)などを見ながら歩く。まるで中世にタイムスリップしたようだ。VRなど最新技術を駆使した展示や歴史体験ができるアクティビティもあり、楽しみながら城の歴史を学べる。