もしもの時は「家族代行サービス」で縁切りも。7歳で母親に置いて行かれ、中2で父にも捨てられ児童相談所施設へ。二度と母親に会う気はない
「親の面倒は子どもがみるもの」。そんな固定観念にとらわれず、「介護」「看取り」「葬儀」までを代行業者に頼む人が増えているようです。実際の利用者たちの思いを聞きました 昼夜問わない愚痴の電話、お金の無心「親の面倒をみるのは当然」の態度に耐え切れず * * * * * * * ◆縁を切る《家族じまい》 千葉県に住む主婦、常田泉美さん(55歳)は、二度と母親に会うつもりはないと断言する。 もともと父母は仲が悪く、常田さんは物心ついた時から激しい言い争いをする両親を見て育った。ある日、小学校から帰ると、母親の荷物がない。父からは何の説明もなかったが、7歳だった常田さんは母が出て行ったとすぐ理解した。 「実はそれほどショックではありませんでした。というのも、それまで母から『あんたなんか産まなきゃよかった』と何度も言われていたので。たぶん私がいるせいで父と別れられないと思っていたのでしょう」 だがその翌年から常田さんは不登校になり、ひきこもり状態に。きっかけや理由は、今もうまく説明することができない。彼女の不登校は4年間続いたが、中学2年生の時、突然家を訪ねてきた児童相談所職員に連れて行かれ、そのまま施設に入所させられる。 「しばらく経って、児相を呼んだのは父だったとわかりました。父とはそれ以来、会わずじまいです」
施設にいた頃は母親を憎んでいたという常田さん。しかし、自身が結婚し子どもができると、そんな気持ちもおさまってきた。 「当時小学生だった息子が『お祖母ちゃんに会いたい』と言うので、母の居場所を捜して会ったんです。その時に私が、実は施設にいたという話をしたら、『知ってた』と。じゃあ、どうして一度も会いにこなかったんだろうと思いましたが、聞けませんでした。それに久しぶりなのに、母は自分の話ばかり。お父さんがどれほどひどかったかとか、今は仕事がどんなに大変かとか。『置いて行ってごめん』という言葉は最後までなかった」 その後、母親とは数回会ったが、些細なことで口論になり、現在に至るまで音信不通だ。 「今は恨みも怒りも特にありません。でも、老後の面倒をみてほしいと言われたら断ります。産んでもらったけど、育ててもらった覚えはないので」 たまたま知った家族代行サービスには相談だけした。将来何かあれば委託するかもしれないが、このまま縁が切れても構わないというのが本音だ。 LMNの遠藤さんは、「最近は、どうすれば親と縁を切れるかという相談をよく受けます。いわゆる《家族じまい》ですね。子の依頼を受けて親側に連絡すると、本人も身に覚えがあるからか、大抵すんなり受け入れられます」と語る。 家族だからといって必ずしも関係が良好なわけではない。そんな時に相談できたり、世話を頼めたりする場所やシステムがあることは、これからの時代、より必要になっていくのかもしれない。
古川美穂
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