【会社設立】信用力・運営資金を考慮した「適切な資本金額」の決め方【司法書士が解説】
会社設立は、新たなビジネスをスタートさせる大切な一歩です。しかし、手続きや準備を誤ると、思わぬトラブルやコストが発生し、事業運営に悪影響を及ぼすことがあります。会社設立で失敗を防ぐためのポイントとして、今回は「適切な資本金額の決定」を見ていきましょう。設立支援実績1,000社以上の加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
資本金の役割
資本金は、設立時に会社が保有する初期の運営資金であり、法律的にも財務的にも重要な意味を持つ要素です。 〈資本金の主な役割〉 ・信用力の象徴:資本金額は、会社の安定性や信頼性を示す指標として取引先や金融機関に注目されます。 ・運営資金の確保:設立直後の事業運営に必要な費用を賄います。 ・法的基盤の形成:登記などに記載され、公的に会社の財務基盤を示します。 適切な資本金を設定することで、設立後のトラブルを回避し、スムーズな事業運営を実現する基盤を築けます。
適切な資本金額を決める3つの視点
(1)信用力を意識する 資本金は、取引先や金融機関が会社を評価するうえで最初に見る指標の1つです。特に法人間取引では、資本金額が信用度に直結する場合が少なくありません。 ・少なすぎる資本金のリスク: 「資金力に不安がある」と思われ、取引先や銀行からの信用を得にくくなります。特に法人向けビジネスでは、「最低でも300万円以上」が安心感を与える目安になることが多いです。 ・信頼を高める適切な額: 業種や取引先の規模によりますが、100万円~500万円程度が一般的な範囲です。具体的な取引相手を想定し、それに見合う額を設定しましょう。
(2)実際の運営資金を試算する
設立後、事業が安定するまでの運営資金を賄えるだけの資本金を設定することが重要です。 ・運営資金の計算方法 1.家賃や設備費、光熱費 2.初期の仕入れ費用 3.広告・マーケティング費 4.人件費(従業員を雇う場合) これらを合計し、3~6ヵ月分の運営資金を資本金で賄える額を目安に設定します。 ・不足分は外部調達も検討 資本金だけで全額を賄う必要はありません。銀行融資や助成金、補助金の活用も視野に入れましょう。 (3)税務や法定費用の影響を考慮する 資本金額は、税務負担や法定費用に直接影響を与える要素でもあります。 ・法人住民税の均等割 資本金が1,000万円未満:年間7万円 資本金が1,000万円以上:年間18万円 →資本金が1,000万円を超えると税負担が増えるため、慎重な検討が必要です。 ・消費税の免税措置 資本金1,000万円未満で設立すると、最初の2年間は消費税が免税になる場合があります。特に設立直後の負担を軽減したい場合は、この制度を活用できる額に設定することが有効です。