「その子が持っているものを伸ばせばいい」奥山佳恵がダウン症の次男を育てて気づいた“本来の子育ての姿”
「世の中は多様性であふれている」次男を通じて知った子育ての本来の姿
――ダウン症のお子さんを育てて約10年が経ち、いまどんなことを感じられていますか? 奥山佳恵: 育てれば育てるほど、知れば知るほど次男の子育ても障がいのない子どもの子育てと同じだったんだなという実感が深まっています。将来を見出せなかった最初の1~2年はすごく長く感じましたが、「この子は不幸な子でもかわいそうな子でもない」と思った時から、障がいのある子を育てているとは思っていないんですね。 もちろん次男ができることは少ないですが、そこに焦点を当ててしまうと、なかなか希望を見出せないと思うんですけど。でもこの10年で感じたのは「できないことは悪いことじゃない」ということ。最初は普通の子に近づけるために努力しなければならないと思っていましたが、いろんな方にお会いしたり、インクルーシブ教育という言葉を知ったりするうちに、「できてもいいし、できなくてもいい」という気持ちになっていきました。 それまで定期発達の子どもとしか関わってこなかったので、できないことはできるようにならなければいけないし、いい大学に入っていい就職先を見つけないと子どもは幸せになれないと思っていた。それが私の責任だと思っていたんですけど、できなくてもいいんだと思えるようになったんです。 人によってはできないこともあるし、いろんな人が世の中にいる。次男は持っているものを伸ばせば良いし、生き方にも多様性があると気づかされましたね。次男にはいろいろできるようになってもらおうというより、いま次男が持っているものを伸ばそうと。それって結局、子育ての本来の姿だと思うんです。 ----- 奥山佳恵 1974年、東京都生まれ。1990年、映画「喜多郎の十五少女漂流記」全国オーディションでグランプリを受賞し、1992年同映画でスクリーンデビュー。翌年日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。以降、ドラマ・バラエティ番組などで活躍する。2001年に結婚し、翌年長男を出産。2011年には次男を出産し、その後ダウン症候群と診断される。現在は、ダウン症候群への理解を深めてほしいとブログやテレビ、イベント出演・講演活動なども積極的におこなう。著書に「眠れぬ森の育児」「生きてるだけで100点満点!」がある。 文:優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)