コートジボワール 警戒すべきは呪術?
これに抗議したカメルーンは、出場拒否を表明。結局ンコノは釈放され、試合は開催されたものの、ベンチ入りを認められなかった。試合開始90分前まで、ピッチに出てはならないという大会規則を援用しての措置である。ンコノは当時を振り返り、「芝の状態を確かめたかっただけ」と苦笑する。 なお、この試合中、明らかにトランス状態に陥った女性が客席からピッチに抜け出し、呪術と思しき何事かを行うなど、ンコノの芝触れ行為よりも、はるかに異様な光景が繰り広げられた。だが、警備員は、これを放置。マリのサポーターで埋め尽くされた場内は、むしろ更に盛り上がり、興奮は頂点に達した。結果は3対0でカメルーンの勝利。実力通りの結果と見るか、開催国マリの準決勝進出という躍進を呪術が支えたと解釈するのか、それとも、ンコノが絶大なパワーの何事かを施したのか……。 この2002年、セネガルがアフリカ選手権決勝に進出、初出場のW杯でも、準々決勝進出の快挙を成し遂げた。一部には、W代表スタッフのリストに呪術師が登録されていたという噂がある。また、同大会初戦で、前回大会優勝のフランスから決勝点を挙げたパパ・ブバ・ディオプは、クラブにおいて、動物の血を混ぜた何物かをピッチに撒くなどの儀式を行っていた。2002年、バスケットボールと土着相撲が国技であるセネガルが、No.1スポーツではないサッカーで快挙を成し遂げたわけだが、その理由は果たして……。 日本の藁人形など、世界各地に呪いの術は存在するが、最も有名なものはヴードゥー教であろう。カリブ海のハイチや、アメリカ南部での信仰が知られているが、その起源はアフリカにある。より正確には、西アフリカに位置する現在のベナン共和国であるが、ベナンと西アフリカのフランス語圏では、ヴードゥーではなく、「ヴォドゥン」という表記が用いられている。ヴォドゥンとは、「神」、「精霊」などを意味する。風、火、水のヴォドゥンなどが存在、つまり、日本でいうところの「八百万の神」に感覚は近い。万物を崇める精霊信仰がヴードゥー教の基本であり、決して呪いが全てではない。