コートジボワール 警戒すべきは呪術?
筆者は、ガーナで、呪術師から話を聞く機会に恵まれた。その話を要約すると、ハーブの利用など、秘術を用いた精霊のパワーの利用が、彼らの役割の基本である。古来、呪術師は世界各地において、薬草などの知識を持つ民間療法士としての位置を占めてきた経緯を持っている。呪術師と呼ぶよりも、「祈祷師」の呼称の方が実態に近いのかもしれない。同氏によると、代表を含むガーナの大半のチームが、呪術師を雇用しているという。しかし、その存在が口外されることはなく、代表や各クラブが誰を雇っているのかは秘密であり、謎に包まれている。大陸全体の90%以上のサッカーチームが、呪術師をスタッフに採用しているという報告もある。もはや、アフリカのクラブに、呪術師が関わっていること自体は、公然の秘密と言えそうである。 動物の血やハーブを混ぜた液体でシャツを洗う、その液体を身体に擦り込む、蛇の皮で作った粉をロッカーやピッチに撒くなど、彼らの仕事は多岐に及ぶ。ドイツのオリヴァー・ベッカーは、タンザニアでの撮影シーンからなるドキュメンタリーフィルムを制作、深夜の墓地訪問その他、サッカー選手たちが儀式を受ける様子を紹介している。不気味な光景だが、これらは選手にパワーを与えるための行為である。なお、トーゴの首都ロメには、動物の皮や骨や頭などが並ぶ、呪術用品市場が存在する。 呪術師が選手のパフォーマンス向上に一役買う一方で彼らが呪いの技法を操るのも事実である。ガーナの祈祷師は、わかりやすい例として、カタツムリを使う技法を説明してくれた。動きの遅い生物の象徴であるカタツムリを磨り潰して調合した物質を、呪術の対象となる選手の家の前に撒いて置く。この上を通った選手の足が遅くなり、呪術を用いた側のチームが有利になるというものである。また、相手に通告することで、効力を発揮するという。 さて、前置きが長くなったが、コートジボワールも呪術を使うのだろうか。コートジボワールは、貧困を抱えつつも、アフリカ諸国の中では、突出した発展を遂げている国であるが、この国のサッカーも呪術と無縁ではない。