二流、三流のコンサルほど「教える」という姿勢が強い…会社を潰すコンサル、本物のコンサルを分ける3点
■日本の大学にはない、ハーバード大学の「面会制度」 ちなみに私が学んだハーバード大学は、日本の大学教育とは全く違う。そこでは「考えること」を教えてくれるのだ。先生が課題となるテーマを最初に学生に話す。それについてどう考えるか、学生たちが自由に意見を出すのだ。 生徒の話は9割方つまらない意見が多いのだが、その中の1割ぐらいに、キラリと輝く意見がある。先生が、最後にそのキラリと輝く1割の意見を拾ってきて、ブラッシュアップして本質的な珠玉のような言葉にしてまとめるのだ。 学生の言葉は素朴で稚拙だが、教授がそれを見事に論理化し、一つの真理として提示する。英語でcrystallize(結晶化)というのだけど、日本語の概念にはない言葉かもしれない。 また、ハーバードでは「面会制度」がある。学生が教授に面会を希望すると、2週間以内に最低10分間は面会しなければならない決まりになっている。こんなのはまず日本の大学では見られない。 ■「教える」のではなく、一緒に「考える」 あるとき、私はその面会で教授に「この間の授業ですが、私はいったい何が問題だったのかがわかりませんでした。だから答えもわからなかった」と言うと、「キミは最高の学習をしたね」と言う。 「じつは私もあの件に関しては、何が問題なのかわからない。問題が規定されないのに、答えが出てくるわけがない。キミはその真理を学んだんだ」と。ふざけたことを言う教授だと思ったけれど、あれから何十年かして私はすごいことを教わったと実感している。 いずれにしても、「教える」のではなく、一緒に「考える」のが大学の授業のスタイルなのだ。 話は少し脱線したけれど、オリジナリティもクリエイティビティもないコンサルタントほど、自分が勉強したことを金科玉条的に掲げて、上から目線で教えてやるという姿勢に陥りがちだ。 このような“教師型コンサルタント”を完全否定するつもりはない。知識ももちろん必要だから、企業が社員教育的な意味でそのようなコンサルタントを望むのであれば、それもありだろう。 ただし、このようなタイプのコンサルタントの中には、前述した特徴①のように、自分の知識の範囲だけに捉われ、誤った分析から企業をミスリードしてしまう危険性が高い人も少なくない。十分注意しなければならない。 ---------- 堀 紘一(ほり・こういち) 経営コンサルタント 1945年兵庫県。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストン コンサルティング グループで経営戦略策定を支援。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業のコンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。著書多数。 ---------- ---------- 津田 久資(つだ・ひさし) 戦略コンサルタント 東京大学法学部卒業。カリフォルニア大学バークレー校経営大学院修了(MBA)。博報堂、ボストン コンサルティング グループ、チューリッヒ保険などで、一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。現在はコンサルティング業務を行いながら大手企業などの研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。のべ1万人以上の指導実績を持つ。著書に『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか──論理思考のシンプルな本質』『新マーケティング原論』(ともにダイヤモンド社)など、共著に『ロジカル面接術』(ワック)などがある。 ----------
経営コンサルタント 堀 紘一、戦略コンサルタント 津田 久資