【毎日書評】大きな成功より「1ミリの成功体験」を重ねた方が幸せになれる理由
「あきらめる」ということばには、どこかネガティブなイメージがあります。しかし聖心会シスターである『ゆっくり変わる』(鈴木秀子 著、アスコム)の著者によれば、「聖なるあきらめ」ということばが存在するのだそうです。 「あきらめる」という言葉は、2つの異なる意味を持っています。 ひとつは「諦める」です。「投げ出す」「執着しない」という意味です。 そして、もうひとつは「明らめる」と書きます。仏教の言葉で「物事を明らかにする」「真理に達する」「つまびらかにする」という意味を持ちます。 「聖なるあきらめ」の第一歩は、現状を把握するための「明らめる」ことから始まります。(「はじめに」より) 具体的にはまず、「自分とはなにか」というところから始めるといいそうです。どこまでいっても自分は自分なのだから、自分が自分自身であると「明らか」にするべきだということ。無理をして自分を大きく見せる必要も、いまの自分を否定する必要もないわけです。 とはいえ人には向上心があるので、どうしても「もっとがんばらなければ」と思ってしまいがちではあります。しかし一度、いまの自分を充分に認めた上で、さらに幸せになりたいと願うのであれば、ゆっくり変わっていけばいいというのです。 大切なのは、どんなに小さな歩みでもいいから続けること。まわりを見ると、みんながすごそうに見え、自分も変わらなければいけないと思ってしまったりするもの。しかし一度に変わろうとすると必ず反動があるので、できる範囲で「ゆっくり」進めばいいということです。 90歳を超えた著者は、長く生きてきた結果、少しずつ変わるのがいちばん効果的だとわかったのだといいます。ゆっくりとしたペースのなかで、いつの間にか変わっていたと自覚できれば、それがベストだというわけです。 そうした考え方に基づいて書かれた本書の第3章「変わる方向を間違えないために、本当の望みを見極める」のなかから、きょうは仕事に関連することに注目してみたいと思います。