なぜ落選?!球界重鎮が野球殿堂に警鐘鳴らす
野球殿堂入りの発表が15日、行われ、プレーヤー表彰では元中日の立浪和義氏、エキスパート表彰では元中日、元横浜監督の権藤博氏、特別表彰では元高野連会長の脇村春夫氏が選出された。だが、一方で、“最強助っ人”と呼ばれた横浜DeNAのアレックス・ラミレス監督、元阪神のランディ・バース氏、元阪神、元西武の田淵幸一氏らの注目の候補者は票が足りず落選した。また特別表彰では、出生地の福島から「栄冠は君に輝く」や「六甲おろし」など野球に関する数多くの名曲を作った作曲家の故・古関裕而氏の殿堂入り運動が起きていたが、そもそも候補者にも入っていなかった。当選、落選の議論は、さておき、日本の殿堂入りの権威やあり方は、このままでいいのだろうか。
広岡氏は田淵氏に1票
1992年に殿堂入り、エキスパート部門の投票権を持つ巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏は、立浪氏、権藤氏の殿堂入り結果を知り、こう感想を口にした。 「権藤は納得だ。『権藤、権藤、雨、権藤』と呼ばれるほど、現役時代にはよく投げた。コーチとしても選手を育て、私がロッテGM時代にも投手コーチとして声をかけたことがある。横浜の監督として日本一にもなった。立浪も理解できる。入団当初の守備は、たいしたものだった。段々と下手になったが、その最初のイメージが今でも残っている」 2008年から始まったエキスパート表彰は、監督、コーチ引退後6か月以上、現役引退後21年以上が対象で、殿堂入りメンバー、30年以上の野球記者が5人を連記する方式で選出される。有効投票数の75%が必要だが、広岡氏が、今回、投票したのは、かつての教え子でもある田淵氏だったという。 「田淵は、ミスタータイガース。あの王と争って本塁打王を取った。スケールとしては、後にも先にも田淵を超える大型捕手はいない。西武時代に“将来、指導者になる人間。今後、そういうことを頭に入れながら勉強と努力をしなさい”という話をした。ダイエーの監督としては失敗したが、阪神、楽天で星野をサポートして打撃コーチとして努力した。性格も明るい。来年は殿堂に入るのかもしれないが、なぜ票が足りなかったのかな」 広岡氏が推した田淵氏は、権藤氏に次ぐ次点だったが当確ラインの「100」に14票足らない86票で落選した。通算本塁打は、歴代11位となる474本。阪神時代の1975年には43本塁打で王貞治の14年連続本塁打王を阻止した。東京六大学時代からの“親友”故・星野仙一氏に誘われ、阪神、北京五輪代表チーム、楽天で打撃コーチを務めて星野氏をサポートした。辛口の広岡氏が推薦するだけの球歴がある。 3位は84票のバース氏で、4位は新候補となった41票の元阪神の掛布雅之氏だった。 東映のエースとして通算162勝、9連続三振などの記録を持ち、ヤクルト、日ハム監督を務めた土橋正幸氏、日ハム監督時代に“親分”の愛称で親しまれた大沢啓二氏の2人の故人の票も伸びず、本塁打王、打点王を3度獲得、ミスターブレーブスと呼ばれ、故西本幸雄氏が生前「長池が殿堂入りできないのはおかしい」と、手紙を選考委員に送ったと言う長池徳士氏も、23票しか得票できなかった。