「ぼくはたまたまうまくいった」東京から佐賀県に移住したライター・中川淳一郎さんが考える“地方移住で大切なこと”
満員電車や高額な住居費、ヒートアイランド現象など──とかく都会は生きにくい。そこで自然豊かな地方への移住を夢見る人も少なくない。特にコロナ禍以降、各地での受け皿が広がり、リモートワークが普及するなどして、条件は整ってきた。実際にやってみると、理想とのギャップに挫折する人も……。そこで、リアルケースを取材、波瀾万丈の移住体験記をお届けする。 【表】誰と、どこで、何をして暮らすか 「地方移住を成功させるための7か条」
【東京都から佐賀県へ移住した中川淳一郎さん】 2020年に夫婦で佐賀県唐津市に移住。当時47才。移住前からフリーライター、編集者、PRプランナーなどとして活動しており、それらの仕事はリモートワークで継続中。
東京で約23万円だった家賃は約6万円に
4年前に佐賀県唐津市に移住したライターの中川淳一郎さん(51才)。いまも月に40本の連載を抱えるなど多忙を極めているが、移住前はいまと比較にならないほどだったという。 「満員電車に押し込まれ、締切に追われる──そんな命を削る日々が嫌で、かねて50才になる前にセミリタイアしてアメリカに移住しようと考えていました」 ところが、コロナ禍で計画は頓挫。そんなとき、 「佐賀県が県内に短期移住して観光情報などを発信してくれる人を探しているんだけど、やりませんか?」 と知人に誘われたという。 「移住期間は1か月と言われましたが、東京には嫌気がさしていたし、どうせなら長く住みたいと思いました。ぼくは前から農業や釣りに興味があったので、海があってその両方ができる唐津市に移住を決めました」
仕事はパソコンと電話があればどこでもできるため、量は減らしたもののそのまま継続。職探しの手間がかからなかったため、一般的な移住よりは気軽に暮らし始められたという。 「食べ物はおいしいし、人はやさしいし、唐津は本当に最高です。東京では約23万円だった家賃は、およそ6万円になりました」
大切なのはコミュニケーション能力
近所の居酒屋に通ううち、おかみさんをはじめ、地元住民ともすぐに仲よくなれたという中川さん。 地方移住で大切なのはコミュニケーション能力だと続ける。 「ぼくはたまたまうまくいったケース。幸いでした。移住の最も難しい点は人脈作りだと思います。なんせ、それまでの人間関係がリセットされてしまいますから。 知り合いのいない場所で、人脈を築き直すのは大変。移住を考えるならコミュニケーション能力を鍛えておいて損はないでしょう」 自分と同じ、都会からの移住者を見て気づかされることもあったという。 「50代で移住する人は、ある程度の地位を築いてきたケースが多い。そのせいか、過去の栄光を自慢する人をよく見かけます。移住先に受け入れてもらいたいなら、その土地の文化や風習をリスペクトし、謙虚に振る舞った方がいいと思います」 郷に入っては郷に従えを肝に銘じておこう。 ※女性セブン2024年10月17日号