あまりに大きい「親孝行」の代償…生活保護費〈月11万円〉で暮らす52歳女性が直面する「死ぬまで生活保護」の現実味【FPの助言】
介護生活を終えた京子さんを襲った「さらなる悲劇」
そんな折、京子さんはひどい腹痛に襲われ、職場で倒れてしまいました。 病院に運ばれ診察を受けた結果、「子宮内膜症」を患っていることが判明。「出血がひどいので入院を」という医師に、京子さんは涙を流して訴えます。 「そんな……、これ以上パートを休んだら生活ができません。入院費も払えません」。 すると、病院勤務のケースワーカーから、次のように声をかけられました。「とはいえ、入院しなくては治療に時間がかかりますし、痛くてお辛いでしょう。お困りでしたら、『生活保護を受給する』という選択肢がありますよ」。 「でも私は働いているし、生活保護をもらう資格がないはずです。それに、生活保護をもらってるなんて周囲に知られたら、ずるいって陰口を叩かれてしまう……」。 「生活保護」という言葉に拒絶反応を示す京子さんでしたが、ケースワーカーが丁寧に説明するうち、最終的には「ひとりでどうにかするしかない、できないことは我慢するしかないと思っていたけど、わたし、この制度に頼ってもいいんですね」と納得。自分の置かれている現状を受け入れ、次のように言いました。 「生活保護、申請します。よろしくお願いします」。
生活保護は、条件を満たせば働いていてももらえる
「生活保護制度」は、日本国憲法第25条に保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」の保障と、自立の助長を目的に整備されているものです。 生活保護を受給する条件は、厚生労働省が定める「最低生活費」よりも収入が少ないこと。そのため、京子さんのように働いていても、収入が最低生活費を下回っていれば受給することが可能です。この場合、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。 なお、最低生活費は地域や年齢、世帯の人数などによって異なり、毎年厚生労働省が算定します。申請の結果、大阪市内在住、52歳・単身の京子さんには毎月約11万円が支給されることが決まりました。
生活保護から抜け出せない「4つ」の理由
生活保護を受給しているあいだは、国民健康保険の対象となるサービスはすべて自己負担なく受けることができます(医療扶助)。したがって、入院費についても、京子さんはお金を気にすることなく過ごすことができました。 医療扶助のほかにも、住宅扶助や生活扶助など、生活保護には8つの扶助があります。治療経過も順調で、「頼ってよかった」と国の手厚いサポートにありがたさを感じる京子さんです。 「退院したらまた働くし、すぐに生活保護から抜け出せるはず」と思っていた京子さんでしたが、そう簡単にはいきませんでした。お米を買うことすらままならず、売れ残りで半額になったお弁当を探す日々。「『なんのために生きてるんだろう』って、次第に虚無感に苛まれるようになりました」と振り返ります。 京子さんだけでなく、就労しながらも生活保護を抜け出せないと悩んでいる人は少なくありません。主な理由として、下記のようなものが挙げられます。 1.収入増加による支給額の減額 生活保護は最低限の生活を保障するために支給されるものですから、就労によって一定の収入があると、支給額が減額されます。無理して働いても生活が楽になる実感がなく、「働いても働かなくても同じでは……」と、継続的な就労への意欲が薄れる原因となっています。 2.家賃の負担 家賃の高い地域で住宅扶助を受けている場合、家賃が一定の基準を超えた分は自己負担となり、生活を圧迫します。 収入の安定しない京子さんにとって継続した家賃の捻出は難しく、生活保護への依存から抜け出すことができません。 3.国民健康保険料の負担 生活保護を受けていると、先述したように国民健康保険料の支払いが免除されているため、医療費の負担がありません。しかし、生活保護を脱却した場合は、所得に応じて国民健康保険料が発生します。 生活が安定しないうちは経済的負担が大きく、健康面に不安のある京子さんには自立への大きな障壁となっています。 4.精神的・社会的なハードル 生活保護を受けていることで自己評価が低くなり、社会とのつながりを持つことが困難になることがあります。 介護生活で引きこもりがちだった京子さんは出かけるための洋服や靴を持っておらず、気がつけば肌はボロボロ、髪もボサボサの状態となっていました。就職のための面接はおろか、友人に会う勇気も持てなかったようです。 上記のような要因が複合的に絡み合い、生活保護から抜け出すことを困難にしています。自立に向けた支援がより充実し、収入増加が生活改善につながる環境が整えばいいのですが、現実にはその道のりが長く険しいことが多いのです。
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