全盲のパラ五輪ランナー、和田選手が中学校で講演/京都府・福知山市
伴走の長谷部さんも
8月のパリパラリンピックに出場した全盲の長距離ランナー、和田伸也選手(47)とガイドランナーの長谷部匠さん(27)を講師に招いた講演会が2日、京都府福知山市前田の日新中学校(市田博校長、生徒557人)で開かれた。高校生の時に網膜の病気を発症し、視力を失った自身の経歴を振り返った和田選手は「『チェンジ』は『チャンス』。大変な時は自分が大きく変われる時だと思い、今後の人生、チャレンジを続けてほしい」と語りかけた。 和田選手はラグビー部で活躍していた高校時代に網膜色素変性症が判明し失明。28歳で本格的に陸上長距離競技を始め、数々の国際大会でメダルを獲得し、東京パラリンピックでは、1500メートルで銀、5千メートルで銅メダルに輝いた。 講演会では和田選手と長谷部さんが登壇した。実際の競技の様子を動画で流しながら、長谷部さんは「『今2周目に入って3番目になった』など、レースの状況やコース、1周のタイムを細かく伝える必要がある」と伴走者の役割を解説。東京パラリンピック決勝レースでは、後ろに迫るロシアの選手の動向をしっかりと伝え、2位を勝ち取れたと言い、2人は「今までで一番うれしかったメダル。努力が報われた瞬間だった」と話した。 レース以外にも、遠征先のホテルでの生活で、風呂やベッド、リモコンなど、「一人でも生活できるように部屋のどこに何があるのかを正確に伝えることもガイドの役割」と長谷部さん。普段の和田選手は、白杖を持って長谷部さんと一緒に行動していて、「人に頼るのが一番安心安全。もし街中で困っている人を見かけたら、ぜひ声を掛けてあげて」と伝えた。
和田選手は病気を発症した当時、だんだん視野が狭くなっていき、「この先どう生きていけばいいのか」と落ち込んだが、「できることをやっていこう」と、点字や白杖の使い方を学び始めた。読み上げ機能を使い、メールのやり取りも可能だといい、「できることは全くなくなると思っていたが、意外とあって、元気が回復した」と話した。 2人は「何が将来につながるかは分からない。一つひとつの行動と出会いを大切に生活してみて」と、生徒たちにエールを送った。 講演会の前にはグラウンドで陸上部員らとの交流もあり、生徒たちは、ランナーと伴走者をつなぐガイドロープの体験をしたほか、2人と600メートル走で競った。「めちゃくちゃ速い」「腕振りを合わせるのが難しい」「走りながら指示を出すのが大変」と感想を話していた。 弱視の男子生徒は、長谷部さんの伴走を体験するなどして交流し、和田選手には普段の生活の様子などを質問。「自分は最低限見えて走ることができるけど、和田選手は全く見えないのにパートナーと信頼し合って走っていてすごいと思った」と話していた。