時代に逆行? 自然吸気6.5L V12で830馬力、フェラーリ新型「12チリンドリ」公開 華麗なるフラッグシップモデル
812スーパーファスト後継
イタリアの自動車メーカーであるフェラーリは5月3日、新型GT「12チリンドリ(12Cilindri)」を公開した。812スーパーファストからマントを引き継ぐ新時代のフラッグシップモデルとなる。 【写真】9500rpmまで回る自然吸気V12エンジン搭載【新型フェラーリ12チリンドリを写真で見る】 (19枚) 最高出力830psの自然吸気6.5L V12エンジンを搭載し、フェラーリが投入するシリーズ生産車としては最もパワフルな純エンジン車である。イタリアでの価格はクーペが39万5000ユーロ(約6510万円)から、スパイダーが43万5000ユーロ(約7170万円)から。 フェラーリの米国進出70周年を記念してマイアミで発表された12チリンドリは、「フェラーリの歴史に新たな章を開く」と表現されている。 自然吸気6.5L V12エンジンは欧州の排ガス規制「ユーロ6e」に適合しており、「当面は世界中で販売し続けることが可能」だという。 フェラーリのマーケティング&販売責任者であるエンリコ・ガリエラ氏は、「性能を維持し、規制に適合させるために行われた作業は実に驚くべきものです。おそらくそれが、V12エンジンに投資し続けるメーカーが少ない理由の1つでしょう」と述べている。 12チリンドリの予想販売台数については、「当社のビジネスは数字で決まるものではない」ため明らかにしなかった。 フェラーリは以前、SUVのプロサングエの販売比率が全体の20%未満にとどまるという見通しを示したが、これは「フェラーリが多目的車のメーカーになるわけではない」ことを強調するためだという。 ガリエラ氏は、フェラーリの成長は特定のモデルラインに縛られるものではなく、むしろ新しいセグメントへの拡大と1台あたりの収益性の向上によって達成されるものだと述べ、12チリンドリの生産規模は812スーパーファストと同程度であることを示唆した。
歴史を受け継ぐデザイン
フェラーリのデザイン責任者であるフラビオ・マンツォーニ氏は、「フェラーリは12チリンドリで新しい時代、新しいデザイン哲学をスタートさせます。前の世代、特に812コンペティツィオーネは非常に彫刻的で、筋肉質で、テクニカルな要素が強かったのですが、それとは明らかに一線を画しています」と述べた。 12チリンドリではあらゆる技術と求められる空力性能を明確なビジョンに統合し、全体をまとめ上げたという。低く突き出たボンネット、筋肉質なフェンダー、キャビンをリア寄りに置いたシルエットなど、大排気量パワーユニットを受け継ぐ812の系譜は明らかだが、スタイリング的には大きく異なる。 フロントエンドは1968年のフェラーリ365GTB/4を意識したデザインが特徴だが、マンツォーニ氏は「ノスタルジックなアプローチ」ではなく、「過去を十分に尊重しながら未来を考えている」ことを示すものだと言う。 カーボンファイバー製のトリムには仕上げを施さず、ボディの塗装とのコントラストをより明確なものとしている。ホイールは金属ブロックからの削り出しだ。 デルタ翼の形をしたトランクリッドの両側には、ボディワークと一体化したフラップが備わっている。これにより高速走行時のダウンフォースを高めつつ、トランクスペースを最大限に確保し、静止時の見た目をすっきりとさせている。 フェラーリによれば、300km/hで走行時にフラップを25mm上げるだけでクルマが安定するという。 それ以外の点では、812コンペティツィオーネなどに比べるとミニマルであり、フェラーリの「形は機能に従う」というデザインアプローチが表れている。 マンツォーニ氏は「フェラーリは決して役に立たないものやフェイクを作りません。エアインテーク、アウトレット、エグゾースト、ディフューザー……他のクルマにはフェイクの要素が数多くあります。見た目重視のディフューザーなど、想像もできません」