「推し活」で不幸になってしまう人の特徴。 精神科医が伝える“推すために一番大切なこと”
「キラキラ」の後に「推し活」ブームが来た意味
――なぜ今、多くの人が「推し活」に多くの人がハマるのでしょうか。 熊代:まずは応援するのは気持ちがいいから。人間って自分が褒められること、つまり「承認欲求」が満たされることだけが気持ちいいわけじゃないんです。みんなで一緒に御神輿を担ぐ行為は楽しいんです。 さらにSNSの存在も重要です。「自分はこのアイドルを推している」「これだけお金を使っている」と、誰でも世間に対して簡単にアウトプットできる。つまり、みんなにアピールすることができるようになった。これも大きいですよね。
そしてもうひとつ、「自分自身がキラキラすること」に疲れてしまったというのが大きいのではないかと思います。「推し活」が台頭してくる前はInstagramが大人気で、多くの人が自撮り棒を持って観光地に出かけるとか、そんな時代が2010年代後半にあったと記憶しています。 ――ネット上にも一時期、「自分を輝かせるために」的な記事が多かったですね。 熊代:その後に「推し活」ブームがきているんです。おそらく「自分キラキラ」の限界というか。どんなに個人で「いいね」を集めようとしても限界があるし、それって結構、疲れるよねということがわかってしまった。そこに「自分キラキラ時代」の疲労感を代替する心の満たし方として「推し活」がちょうど良かったという側面もあるのではないでしょうか。 また、自分個人で叶える夢よりも大きな夢を推しに託すことができる、という面もあると思います。
生きるうえで「誰かに夢を託すこと」は大切
――著書(※)では「推し活」は人を幸せにする、と定義していますね。 熊代:自分の心を満たす際に「褒めてほしい」という欲求だけでは上手くいかないのではないか、という思いが私にはありました。私はハインツ・コフートやアブラハム・マズローといった心理学者の理論を学びましたが、彼らの心理モデルから私は「自分の承認欲求を満たす、つまり“キラキラする”だけでは、そう簡単に人の心は完結しない」という考えを読みとってきました。 ※『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』より