なぜ観光ガイドの地位とスキルが、海外と日本では違うのか? 沖縄在住プロのネイチャーガイドに、ハワイと日本の違いを聞いてきた
ガイドの地位とスキルを向上させる仕組みを
池田さんは現在、シーウッドホテルが提供している星空観測ツアーでガイドを務めている。来間島は、北緯24度という緯度と、星の輝きを邪魔する都市の灯りが少ないという好条件から、⾮常に美しい星空を観ることができる場所。ハワイ州の北部と同緯度のため、ハワイの夜空とほぼ同じ星空を観察することができる。 ハワイと日本の両方のガイド事情を知る池田さんは、日本のガイドについて、「とにかくステータスが低い」と嘆く。それを高めていくためには、知識を高めたり、ガイディングのスキルなどを学べる仕組みが必要なのではないかとの考えだ。 例えば、ハワイのネイチャーガイドは、山や森の「パークレンジャー」、海の「ウォーターマン」から、さまざまなことを学ぶ機会も多いという。パークレンジャーは国立公園などでの自然保護、ウォーターマンはライフガードがメインの役割だが、それぞれ旅行者との接点も持つことから、安全なツアーの催行や最新知識の習得などで、ネイチャーガイドにとっては重要な存在になっている。 日本では、アドベンチャーツーリズムの高まりを受けて、ツアーを一貫して管理するスルーガイド人材が求められているが、育成がなかなか進まない。一方、ハワイでは、自然の保護と安全な観光が体系的につながり、ネイチャーガイドが育ち、スキルが高まる素地がある。 また、ガイド育成を妨げるものとして、池田さんは「地元の観光に対する無関心さもあるのではないか」と指摘する。例えば、「地元の人たちに『来間島は星空観測の聖地』と繰り返し訴えても響かない。地元の人たちにとっては当たり前のことだからでしょう。でも、その素晴らしさを再認識すれば、それを旅行者に伝えたいと思う人がガイドになることもあり得るでしょう」と話す。 さらに、インバウンド旅行者が増加しているなかでも、ガイドが生業として成り立つのが難しく、個人任せの日本では、「企業なり、団体なりが、もっとガイドをバックアップして、ハワイのようにスターガイドを次々と生み出していく必要があるのでは」と提言する。 池田さんにはハワイ島で忘れられない思い出がある。あるグループの中に聴覚障害者の旅行者がいた。その人は、ずっと池田さんの口元を見て、そのガイドの内容を読唇術で追いかけていたという。「こちらが冗談を言ったら、笑ってくれました。あー、通じてると思って、嬉しくなりました。その方は、その後もリピートしてくれました。ガイド冥利に尽きます」。 ガイドは、その国の、その地域の入口になる存在。池田さんは「本当に日本でもガイドの地位が上がることを願ってます」と、改めて、最後に付け加えた。 トラベルジャーナリスト 山田友樹
トラベルボイス編集部