toeが語る9年ぶりのアルバムに込めた「希望」、ポストロック最高峰バンドの現在地
タイトルに込めた「希望」、フジロックに向けて
―アルバムの最後にタイトルトラックの「NOW I SEE THE LIGHT」が置かれています。 山㟢:最初にシャイロ・ダイナスティが好きって言いましたけど、そういう雰囲気の曲をやりたかったんです。曲として成り立ってなくてもよくて、あのメロディのループ30秒みたいな感じでいいかなとか思って作ったんですけど、でも作ってたら一応サビっぽいところもできてきて、思ってたよりすごくいい曲になったから、一番最後に持ってきた感じ。今までのtoeの曲っぽくない部分もあったりしていいかなって。 ―タイトルに関しては、やはりコロナ禍があり、それ以外にも社会状況は国内外で混迷を極めている状態で。そういう時代だからこそ、希望を示すような言葉になったし、灯台のアートワークが象徴するように、この先の未来を照らし出すイメージなのかなと。 山㟢:まずアルバムのタイトルを先に決めました。基本的にネガティブなワードにはしたくなくて、でもポジティブすぎるのも好きではなくて、「Get Up, Stand Up」(ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ)の歌詞の一部から。ジャマイカ人が話す英語、パトワ語みたいなのが結構好きで、「Get Up, Stand Up」の歌詞は「Now You See The Light」なんだけど、あれを一人称にして、希望みたいなものが見えるような感じ。最初にそれが決まって。ジャケットに佐藤(健寿)くんの写真を使うのはタイトルが決まる前から話してたんですけど、「タイトル決まったよ」って話をしたら、「ちょうどこういうのを撮ってきたんですけど」って、この灯台の写真が来て、「これがいいね」ってなって。曲自体は一番最後に録った曲で、歌詞は録音の前の日ぐらい、ギリギリまで考えて、アルバムタイトルと同じタイトルの曲にしようと思って、こういう歌詞になったんです。 ―「Get Up, Stand Up」がモチーフというと政治的な側面も感じさせますが、toeは音楽にメッセージを込めるのではなく、音楽はあくまで音楽として成立させるスタンスかなと。 山㟢:基本的に政治性みたいなものは生きてるなら全員絶対切り離せないのに、普段切り離してるような気持ちになってるだけで、誰が何をやろうにも全てにおいて関係している気がして。僕らが音楽をやるときに何を優先するかっていうと、わかりやすい言葉でのメッセージよりも、音楽を聴いたときの耳障りの方を優先しちゃうから、こういう歌詞だったりこういう曲になってるけど、俺らが政治に興味がないかっていうともちろんそういうことではなく、実際には必ず関係しているとは思いますけどね。 ―最後に、今年のフジロックについて聞かせてください。定期的に出演しているかと思いますが、フジロックはバンドにとって特別な場所だと言えますか? 山㟢:「このフェスだから頑張ります」とか「アメリカツアーだから頑張ります」みたいなのはあんまり好きじゃなくて、「普通のライブハウスでも同じように頑張れよ」と思うので、基本的にはいつもと同じというか、そのときにできる一番いい演奏をその都度その都度やるだけだと思ってるんです。でもやっぱりフジに呼ばれると嬉しいですよね。あの雰囲気がいいのか、特別感は何となくあります。一番最初に出してもらったときに土岐(麻子)ちゃんが来て歌ってくれて(2007年)、みんな今もあのときの話をしてくれたりするし、大きな音楽フェスに出させてもらったのも、フジが最初だった気がしますしね。 ―アルバムリリース後の出演になるわけで、タイミング的にもばっちりですね。 山㟢:何とか間に合いました。でもなあ、あと2週間あったらもうちょっとミックスの修正、ここの音をちっちゃくしたりとかできたけど……でもきりがないんだよね。 ―美濃さんのスタジオができて、やろうと思えばいつまでもやれちゃうんでしょうけど、でも遂にtoeの新しいアルバムが聴けたのは一ファンとしてすごく嬉しいです。 山㟢:もうそのときの正解でやるしかないんだよなと思って、踏ん切りがつきました。 --- toe 『NOW I SEE THE LIGHT』 2024年7月10日リリース FUJI ROCK FESTIVAL’24 2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場 ※toeは7月28日(日)出演 仁川ペンタポート・ロック・フェスティバル 2024年8月2日(金)~4日(日) 韓国・仁川 松島月光祝祭公園 (ペンタポートパーク) ※toeは8月2日(金)出演 ONE PARK FESTIVAL 2024 2024年9月7日 (土) ~ 9月8日 (日) 会場:福井県:福井市中央公園 特設会場
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