toeが語る9年ぶりのアルバムに込めた「希望」、ポストロック最高峰バンドの現在地
美濃隆章のスタジオで話し合った音像
―『NOW I SEE THE LIGHT』はフルアルバムとしては実に9年ぶりのリリースとなるわけですが、やはり自分たちの思うかっこいい組み合わせを目指して作っていった? 山㟢:そうですね。ずっとアルバムを出したいとは思ってたので、曲のアイデアはめちゃくちゃためてたんです。ギターのリフやコード進行、歌メロとかは携帯に何百も入ってるんですよ。ただ「録音しよう」って決めないと、それが曲にならないというか、10秒ぐらいの曲のアイデアはたくさんあるんだけど、それを3~4分の曲にする作業がめんどくさくて(笑)。だから今回「よし、作ろう」ってなったら、まずはそのストックの中からどれを曲にするかをピックアップしていきました。 ―2020年に美濃さんのプライベートスタジオが完成しましたが、録音はそこを使っているのでしょうか? 山㟢:ドラムとかのベーシックは大きいスタジオを借りて録ったけど、その後はずっと美濃くんと2人で、美濃くんのスタジオでずっと作業をしました。普通のスタジオみたいに、毎回車を頼んで機材を運んでもらってとかもないし、チャリンコで行って、一日作業して、もう1回直したかったら戻ってやるみたいな、結構気楽にできましたね。 ―コロナ禍以降はホームレコーディングの割合が増えたりもしていますが、しっかりスタジオで音を鳴らして録っていると。 山㟢:今回ギターに関しては全部リアンプでやりました。最初からアンプを決めて、マイクを立てて録るんじゃなくて、最初はラインで録って、その後にいろんなアンプでリアンプを試しながら、「この曲はこのアンプのこれでやろう」みたいな感じだったので、どっちかっていうと、宅録寄りな録り方な気がします。ギターのダイナミックさはそんなに求めてないので、リアンプでも十分かなって。フィードバックさせたりとかだと、アンプの前に行かないとダメだと思うんですけど、俺らは今そういうことはやらないので。ギターのちょっとした音色とか音像の感じは、決め打ちでマイクで録っちゃうとそこからはイコライジングしか変えられないけど、リアンプさせるってことはアンプ自体を変えられて、根本的なカラーも変えられるから、やりやすかったですね。 ―音像に関しては美濃さんとはどんなやり取りがありましたか? 山㟢:基本的に、僕は音のいい悪いが全くわからないんですよ。世間の人たちが「これはいい音、これは悪い音」って判断してるさじ加減が全然わからなくて、自分にわかるのは音像とか雰囲気のことくらい。なので、美濃くんに「この曲こうしたいんだよね」みたいな話をボソッとはするけど、まずは彼が録ったものを、彼がいいと思うバランスと音色でミックスしてもらって、そこから俺がああじゃないこうじゃないって言って、2人の考えを合わせていく感じ。 ―みんなが宅録をやるようになって、立体的なミックスの音源も増えた印象ですけど、今回のアルバムは比較的ベーシックに各楽器があるべきところに置かれている印象です。でも声だったりとか、上ものに関しては面白いステレオ感になってたりもして。 山㟢:フライング・ロータスの最初のころに売れたやつとかもさ、ずっと左右交互にボーカルが鳴ってたりするじゃん? 俺はああいうのが面白いなと思って結構好きなんだけど、エンジニア的な耳で聴くと嫌なのかもしれない。なのでそこは俺もいろいろ言いつつ、美濃くんの意見も聞きつつ、最終的にこうなった感じですね。