AI時代にこそ求められる人間のリアルな感覚 --子どもの非認知能力は外遊びで伸びる
つまり、子どもの頃からリアルで複雑な視覚的体験を重ねておくことが、人の成長にとってとても重要だと言えるのです。 ■リアルとバーチャルでは教育効果に差が出る 為末:最近では幼少期からタブレットを使った教育も進んでいます。目への影響はありますか? 窪田:見てはいけないわけではありませんが、長時間にわたってテレビやタブレットのような平面のモニターだけを見続けているのは、目の成長には悪影響です。目のことを考えると、やはり外に出て、遠くのものを見ることが大事です。
為末:そうなんですね。コロナ禍を経てリモートワークが増えましたが、人とのコミュニケーションにおいても、対面とモニター越しでは違う気がします。 窪田:おっしゃる通りです。ワシントン大学で教育学を研究している人が、こんな実験をしています。1歳の子どもに1年間、リアルとバーチャルで外国語を教えた場合の習得度の違いを検証したところ、なんと倍以上も差がついたそうです。リアルのほうが圧倒的に習得度は高くなる。
為末:そんなに差があるんですね。 窪田:バーチャルでは最新技術を使い、まさに先生がその場にいるかのようにホログラムで再現されていたのですが、それでもリアルには及ばなかった。だから、どんなに技術が進化しても、再現できないものがあるのです。 特に子どもの場合は、リアルとバーチャルでは受け取る情報の豊かさが全然違います。それだけリアルの経験が、教育に及ぼす影響は大きいと言えます。 為末:なんとなく感覚としては分かっていましたが、研究でも明らかにされているのですね。初めて知りました。
■近視の対策で日本が取り残されないために 為末:私がメンバーとして活動している「外あそび推進の会」では、外遊びによって近視の発症を予防することができることや、進行の抑制につながることを発信しています。特に、小さなお子さんたちを育てている同世代の人たちに知ってほしいです。 窪田:日本ではまだまだ「近視になったらメガネをかければいい」と思われていますが、近視は将来的に失明のリスクを高める可能性のある怖い病気です。