15年ぶりの火星大接近、望遠鏡の「特需」は再来するか?
15年ぶりの「火星大接近」を7月31日に控え、天体望遠鏡の売れ行きが好調です。「6万年ぶり」と報道された前回の大接近時は、国内から望遠鏡の在庫がなくなるくらいの勢いだったそう。今年は「特需再来」となるのでしょうか? 望遠鏡業界の期待が高まっています。 15年ぶりの火星大接近、初心者はどんな望遠鏡を選べばいいの?
入門機を中心に需要増、天文ファンの買い替えも
「今年に入って天体望遠鏡の売れ行きは好調で、月によっては前年比で倍以上売れています」と話すのは、家電量販店大手「ビックカメラ」カメラ事業部の野村憲広さん。 6月末までの時点で一番の売れ筋は、2万円台の入門クラスの望遠鏡。次に、4~5万円台の望遠鏡も売れていると言います。初心者需要がメインのようです。野村さんは「これからボーナスの支給時期がきて、夏休みが始まり、7月31日の大接近があります。需要の大きな波はこれからです」と見通します。 東京都台東区の望遠鏡専門店「シュミット」によると、15年前は、望遠鏡の在庫が国内からなくなるくらいの勢いで売れたそうです。今年は、特に春以降、天文ファンの買い替え需要が目立ち始めているとか。都内にある別の天体望遠鏡の専門店では、2018年の年明けから、天文ファンが火星大接近に備えて高いグレードの天体望遠鏡を購入する動きが出始めたとしています。
ビクセンは前回の教訓を生かして増産
7~9月に出荷する望遠鏡の生産台数を例年の3倍に増やしたのは、望遠鏡メーカーのビクセンです。15年前、火星大接近を前にして、製品の出荷ができない状況に陥ったという苦い経験があったからです。 前回、望遠鏡の売れ行きがより急激に伸びたのは、火星大接近まで1か月を切ってから。メディアが「6万年ぶりの火星大接近」などとさかんに報道してから、需要が急増したそうです。 「一部の超高額機を除いて、天体望遠鏡がものすごい勢いで売れました。火星大接近当日だった8月27日の1~2週間前には、倉庫が空になってしまい、倉庫の空いたスペースで社員が卓球をしていたほどです」と都築泰久同社取締役。 望遠鏡の生産には2、3か月かかるため、今年は万全の体制で需要を取りこぼしを防ぎたい考えです。 比較的数が出ているのは、鏡筒と架台、三脚がセットになった「ポルタII A80Mf」などの入門機。高級機も売れ始めているほか、カメラを天体望遠鏡に接続する部品も売れているそうです。
ファミリー層と定年退職層に期待
望遠鏡メーカーCELESTRON(セレストロン)とSky-Watcherの販売代理店であるサイトロンジャパンでも、望遠鏡の売上が好調に推移。商品仕入量を例年の3~4倍に増やし、6月は、前年同月比で3倍の売上高となりました。 同社の近(こん)勝之シニアアドバイザーは「天文ファンの需要はある程度手堅いと見込んでいますが、小さなお子さんがいるファミリー層と、第2の人生を楽しむための趣味を探している定年退職層に向けた販売も増えれば」と期待しています。 (取材・文:具志堅浩二)