地銀を襲う巨額の外債損失 きらやか、清水、農林中金… 運用能力で二極化も
だが、3年前に金利0.1%の時に投資した国債の利息は同じ100億円でも満期まで0.1億円しか得られない。政策金利が引き上げられ、預金金利が連れて上がると、逆ザヤとなるリスクも皆無ではない。 第二に、評価損を放置すると、金融機関のリスクテーク力が低下する。統合リスク管理上、有価証券の評価損はリスク資本から控除するのが一般的だ。リスク資本が少なくなれば、場合によってはその分、貸し出しや有価証券の投資規模を縮小しなければならない。投資規模が縮小すると当然収益力は落ちる。 これらの理由により、評価損のない金融機関と多額の評価損を抱える金融機関では、将来の収益力の格差が拡大していく可能性がある。そもそもなぜ評価損を処理できないかといえば、処理するだけの債券以外の有価証券の評価益や期間収益が少ないからだ。 評価損のない金融機関は金利上昇を収益につなげられるが、評価損の大きい金融機関はその機会を享受できない。かくして、将来的には地銀の二極化が進む可能性がある。 地銀ではこれまで外債の処理が優先的に進められてきた。24年3月期の外債・投信などの評価損は前期に比べると大きく減少している。欧米ではすでに政策金利の引き上げは一服し、いつ金利引き下げに転じるかが論点となっている。外債の評価損は今の水準がピークとなる可能性もある。 一方で、日本ではマイナス金利が解除され、一段の政策金利の引き上げが論点とされている。24年3月期の円債の評価損は外債・投信などの4倍近くに膨らんだ(図2)。今後の金利上昇次第では、外債で起こった問題が今度は円債でも起こる可能性がある。 この2年間、多くの地銀で外債評価損の問題が顕在化したことで、有価証券運用部門の人員が補充されないなど実質的に減員となる地銀があったり、むしろ後退している感も否めない。しかし、主食である円債のリスク管理が論点となるならば、むしろ今からでも積極的に増員を図ったり、さまざまな運用手法の習得など運用及びリスク管理態勢の強化を図ったりするべきである。
(伊藤彰一〈いとう・しょういち〉和キャピタル専務取締役)