地銀を襲う巨額の外債損失 きらやか、清水、農林中金… 運用能力で二極化も
■好む「バイ&ホールド型」 金融機関が外債や海外貸し出しを増やしていった理由は、端的にいえば日本では長期にわたって低金利・ゼロ金利環境が続いてきたからだ。地銀の有価証券運用の“主食”である日本国債の10年金利は16年にマイナスをつけ、その後もゼロ近辺で推移する。これでは国債投資で利益が得られるどころか経費さえ賄えない。 そのため、当時1%以上は見込めた米国10年国債などの外債や外債ファンドへの投資が、地銀でも14年ごろから増えていった(図1)。 金融機関の外債の評価損が問題になり始めたのは22年ごろからだ。背景には、新型コロナウイルス禍に端を発する欧米の急激なインフレの進行がある。これを受け、欧米では利上げが急速に進み、低金利の時に投資した債券価格が大幅に下落した。 金利上昇期の債券運用では、傷が浅いうちに売却あるいは損切りし、金利が上がったところで買い直すことが重要だ。合わせ切りのために他の有価証券で評価益づくりを企図したり、各種スワップなどのリスクヘッジをかけることも求められる。 しかし、多くの地銀では、一度投資したら満期まで持ち切る「バイ&ホールド型」の運用を好む。 もちろん、高い金利の債券つまり評価益となっている債券であればそれで問題ない。だが、バイ&ホールド型運用は金利上昇の影響を100%もろに受ける。決算が傷むからといった理由で損切りを避けてバイ&ホールドした銀行は、深い評価損の問題を抱えがちだ。 債券の評価損はあくまでも資本の一時的な毀損(きそん)に過ぎず、国債のような信用リスクが限りなく低い債券であれば、満期になれば元本は償還される。赤字続きの企業の社債といった高リスクの債券さえ抱えていなければ、直接的な経営破綻につながる可能性は低い。その点が自己資本の毀損に直結する貸し倒れ費用の増加とは性質が異なる。 ■評価損次第で収益力に差 だからといって、問題がないわけではない。第一に、評価損となっている債券を保有し続けることは、その金融機関の将来収益力が向上しないことを意味する。いま10年国債に100億円投資すれば、10年金利は約1%のため、今後毎年1億円の利息収入が見込める。