秋葉原がもはや「オタクの聖地」ですらなくなった根本理由
観光地化する秋葉原の未来
さらに、秋葉原のオタクの聖地としての“求心力”そのものが低下していることも、見逃せない。 前述の『東京都千代田区秋葉原地区における商業集積の特徴と変化』が指摘していたように、2000年代後半以降、秋葉原の商業集積は「趣味の専門店街」から「サブカルチャー系の集積地」へとその性格を変えつつあった。アニメや漫画、ゲームなどのオタク向けコンテンツは、もはやマニアだけのものではなくなり、より大衆的な市場を獲得しつつあった。 その一方で、アニメ関連グッズ等のインターネット通販の台頭により、リアル店舗の売り上げは減少の一途をたどっている。とらのあなの閉店は、いわば時代の必然だ。 実店舗にわざわざ足を運ばずとも、オンラインで欲しい商品が手に入る。コロナ禍でそうした傾向はさらに加速した。オタクが秋葉原を訪れる必然性は、もうないといってもよいだろう。現在の秋葉原は、ほかの地域では見られないオタク向けのキャラクターを用いた広告や看板、路上に客引きをするメイドといった光景によって、一種のテーマパーク的な観光スポットとして、にぎわっているだけである。かつてのような、街を歩いているだけでなにか面白いものに出くわすような期待は既にない。 もはや「趣都」とはいえない秋葉原は、どのように変化していくのだろうか。むしろ、オタクが世界に広がった結果、海外に秋葉原のような“新たな聖地”が出現するのかもしれない。
昼間たかし(ルポライター)