松下洸平「柔らかく光が差し込むような作品に」――ドラマ「放課後カルテ」インタビュー
――牧野先生の魅力は? 「うそをつかないところだと思います。うそがないが故にオブラートに包むことも知らないので(笑)、誤解を生むことも多々ありますし、人からやっかまれることはある。病院で働いていた頃は、それが原因で多くのトラブルを起こしてしまったことも。でも彼にとっては、それが正義であり信念なんですよね。社会生活を送る上では少し足りない部分もあったりするのですが、それが彼の性格であり、個性だったりもするのかなぁとか。でも、そこを魅力的に演じたいし、楽しみにしています。どれだけ振り切って演じることができるのか。嫌われる可能性もありますが(笑)、俳優として楽しいところだと思ったりもするので、思いっきり演じたいです」 ――篠谷先生役の森川葵さんとの共演はいかがですか? 「とても潔いお芝居をされている方だと思っています。強い役も弱い役も全身全霊で体当たりで演じられている印象です。篠谷先生は、牧野がこんな感じなので、『多くの人はこう考えているよ』というように視聴者を代表するような目線を持つ方だと思うんです。すごく難しいと思いますが、そういう部分を森川さんがどう演じてくださるのかすごく楽しみです。時に思い切りの良さがある方だと僕は勝手に思っていますが、牧野と篠谷先生は結構口げんかをするんですよ。そのバチバチ感は、特に思い切りやりたいと思います(笑)」
大人になった時に思い出す先生だと思います
――牧野先生は類いまれなる「観察眼」を持っていますが、松下さんご自身の、これだけはほかの人に負けない「観察眼」はありますか? 「体内時計にはかなり自信があります。現場内で、押しているのか巻いているのか(※スケジュールが遅れているのか、早まっているのか)、すぐ気付きます(笑)。みんな気付いていなかったりするんですが、『めちゃくちゃ押しているぞ』っていうのは、特に誰よりも早く気付けます。そこはすごく自信があります。『今日(※取材日当日)も巻いているぞ!』っていうのも、もちろん気付きました(笑)。別に早めようとしている訳ではないのですが、丁寧にやった結果、巻くっていうのは理想ですよね。やっぱり時間って大事だと思うんです。長くなればなる程、ちょっとずつ皆さん疲れてきちゃいますし。限られた時間の中で、丁寧にやりながら1分でも早く帰るというのを大切にしています(笑)」 ――昔と今の小学生って、松下さんはどこが違うと思いますか? 「僕が子どもの頃は、今みたいに携帯電話もなかったし、テレビゲームはあったけど、今ほどネットワークでつながった環境ではなかったので、それと比べると今の子どもたちは自分の居場所が学校以外のところにたくさんあるなと思いました。SNSをやっている子どもや、スマートフォンを持っている子どももいて。いろんな場所があるから、もう一人の自分を抱えて生きている子どもたちがたくさんいるような気がします。僕が子どもの頃は、本当に学校と家しかなかったので、そこで一生懸命生きるしかなかった。でも、今の子どもたちはネットワークの中でも生きられるし、それに伴って関わる人間も多いはずなので、その分、大人たちと同じように人間関係で悩む子も多いのかなと思います」 ――学生時代、松下さんにとっていい先生とはどんな先生でしたか? 「『許してくれる先生』というのが、思い返すと学生時代に何人かいたんです。例えば、自分が授業中に寝てしまったことを許してくれた先生や、放課後に遅くまで残って遊んだり、勉強したり、学校の校舎に残って友達としゃべったりすることを、時に許してくれた先生がいました。その先生たちに出会えたことは、僕にとってはとてもいいことだったと思います。『今日はいいよ、頑張ったから』というように、毎回許してくれるわけではなくて、特別な時に許してくれたような気がします。ある時、許すことの裏側を考えたら、初めて『大人ってすごいな』と思えたんです。いつだって怒っている訳ではなく、子どもではなく、一人の人間として僕を見てくれて接してくれていたんだなって。大人になって気付いた時に、その先生たちに対する感謝の気持ちでいっぱいになりました。あの時、1回だけ許してくれたから、今の自分があるのかもしれないと思うこともあって。そういう先生には今でも感謝していますし、自分も特別な時に『今日はいいよ』って言ってあげられるような大人になりたいと思います。牧野も、いい先生だと思います。もちろん性格的には理解するのに時間がかかると思いますが、大人になった時に思い出す先生だと思います」