固着キャブレターの分解作業で効果的な「段取り」は釜茹でで決まり!!
オーバーホールには燃調キットを利用した
キャブレターは、単純な分解洗浄だけでも性能回復できるケースが多々あるが、しばらく走らせていなかったバイクの場合は、最初から完全分解&完全洗浄したほうが良いだろう。分解時には、ベトベト、ネチョネチョしていたパーツも、洗浄後はキレイさっぱりしていて、組み立て作業も楽になる。組み立て復元の前には、機種専用キットとして1ボディ(1気筒)単位で販売されている、キースター製燃調キットがあると大変便利だ。オーバーホール時に必要不可欠な各種ガスケットやOリング、セッティング変更可能なメインジェット+パイロットジェットは数種類ずつ入っている。何よりも嬉しいのが、フロートバルブセットも同梱されている。摩耗によって使えなくなっているニードルジェットやジェットニードルなども、1ボディ分のキットとして販売されている便利かつレーズナブルな商品だ。 【POINT】 ▶ポイント1・工業用ヒーターの圧倒的な熱量は使い方を間違えるとパーツにダメージを与えてしまうので要注意 ▶ポイント2・お湯を使えば沸騰しても100℃前後なので、安心環境の中で作業進行可能 ▶ポイント3・分解のためのお湯茹と、分解後の各種部品洗浄は、あくまで別工程として考えよう 灯油にしばらく浸した洗浄でも、劣化ガソリンで固着したチョークプランジャは引き抜くことができなかった。そこで「熱湯」を使った分解にチャレンジしてみた。直火バーナーなら熱源で1000℃以上、工業用ヒートガンでも熱源で400℃近くを得られる事実を知れば、仮に使い勝手が良くても、これらの道具はキャブレターメンテナンスには不向きと言わざるを得ない。一方、熱湯なら最高温度でもほぼ100℃前後になる。前出の道具利用時と比べて、温度管理は明らかにしやすい。ただし、洗浄したいパーツによっては、熱湯に対して反応するマテリアルもあるので(ビニール系の樹脂など)、洗浄時には、部品を取り外すなど、あらかじめ対処しなくてはいけない。 ここでは、プランジャが固着したキャブ本体を熱湯+マルチクリーナー液の中に浸し、火を消して30分程度待ってみた。時間経過後、熱湯からキャブを取り上げ、やけどしないように皮手袋でボディを持ち、フランジャ上部の溝をマイナスドライバーで回してみた。すると、ギギッといった手先の感触とともに、スーッと回り、その直後にはスポッと抜けてくれた。プランジャ外周や周辺を凝視すると、カルキのような白いスラッジト劣化ガソリンの固着物が大量に堆積していた。このプランジャは底部分にゴム栓がカシメられていて、普段はバネの力でゴム栓がチョーク通路を閉じる「弁の役割」を果たしている。経年劣化によってゴム栓が潰れてしまうと、チョーク通路から常時ガソリンがチョロチョロ漏れてしまい、それが原因で「ガス濃い症状=キャブセッティングが狂って」しまうことにもなる。冷間始動時は調子イイが、暖機完了後にガスが濃い症状=プラグカブリが発生する際は、このチョークプランジャのコンディションを疑い、確認してみよう(このタイプのプランジャスターターチョークのモデルは、1970年代の2スト車に多い)。もちろんゴム栓が傷んでいなくても、プランジャ本体の作動不良で弁の役割を果たさないと、同じようなカブリ症状になるので覚えておこう。 分解後のキャブパーツは、ヤマハ純正ワイズギア扱いのヤマルーブ「キャブレタークリーナー原液タイプ」で洗浄した。フレッシュなガソリンとクリーナー原液を規定の比率で混ぜることで、キャブ本体通路やフロートチャンバー内の汚れを完全に除去してくれる、実に頼もしく信頼が高いケミカルだ。また利用の際には、ガソリンと混ぜる前にケミカル容器をしっかり振って、洗浄液をしっかり混ぜよう。ここでは全バラにした部品をクリーナー液にドブ漬けして徹底洗浄を試みた。キャブ洗浄を終えたら、キースター製燃調キットを利用して、組み立て復元した。純正部品とは異なり、機種別に1ボディ用でフルキットになったこの商品は、使い勝手が良くリーズナブルでもあるため、リピーターとなっているバイクショップも数多く高好評だ。
たぐちかつみ