「ガザの不条理から目を背けるな」 清田明宏UNRWA保健局長
住井 亨介
パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスによる戦闘が、2023年10月7日に始まってから11カ月。過酷さが増す中、ガザでの救援活動を指揮する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長が、ニッポンドットコムのオンラインインタビューに応じ、「世界の人々はガザの不条理から目を背けてはならない」と訴えた。
避難所に殺到する人々
UNRWA本部があるヨルダンの首都アンマンから、8月29日にガザに入った。戦闘開始以来ガザ入りは今回が3回目だが、状況はどんどん悪化している。今までイスラエル側から避難勧告が一度も出ていない、いわゆる人道支援地域(humanitarian zone)は面積にしてガザ全体の1割に満たず、そこにガザ南部の人口180 万人の多くが殺到している。海外沿いの砂浜にもテントが立つなど隙間がないほどだ。
<ガザ保健当局によると、戦闘開始から2024年8月26日までのガザ側の死者は4万435人。UNRWAは避難民が190万人に上るとしており、ガザ人口の9割に相当する> UNRWAの避難所では、平均でトイレは470人に1カ所、シャワーは2700人に1カ所の割合で、これ以上人々を受け入れられないところまできている。主に学校が避難所になっているが、教室で寝泊まりできるのは女性と子どものみで、男性は周辺でテント暮らしをしている。 もともとインフラが機能していない上、人々の流入で物資の不足、衛生状況の悪化と、人々は疲れ、将来に対する絶望感が漂っている。
底突く医薬品、悪化する衛生状況
攻撃はUNRWA施設の運営にも影響している。8月末現在、ガザに22施設あるUNRWA運営の健康センターのうち稼働しているのはわずか5施設だけだ。戦闘が始まって以降、UNRWAは新たに4カ所のクリニックを開設し、避難所には臨時診療所を54カ所つくった。ガザには各国から多くの医療NGOが入っているが、1次医療(プライマリーケア)ではUNRWAが最大のプラットフォーム(基盤)となっている。1次医療に携わる医師はある程度確保できているものの、地元にいた専門医がガザの外へ退避して不足している。