ダンス振り付けにも著作権?丸パクリされた当事者「許せないというより複雑」生成AI利用したら“権利なし”?
■ダンスも音楽と同じ「組み合わせ」に光明
音楽はメロディー、コード進行など、長年に渡り大量の楽曲が作られてきたこともあり、新たなパターンなどはほぼ出てこないのではと思えるほど表現は積み重ねられている。ダンスにおいても両手、両足など全身を使いながら表現はするものの、今まで全く誰もしたことがない動きというのを新たに生むのは難しく、新しさを認定するのも困難だ。TSUGU氏も「全ての音楽、ダンスに適応させるのはすごく難しい」とする中で、振り付けの組み合わせに対して著作権を認めてもらう可能性を探っている。具体的には動画から3Dのモーションを推定・抽出してデータ化し分類、著作権利用を検知するというものだ。これができれば、ゲームなどにデータを販売することもでき、振り付けの著作権管理も可能になるという。「振り付けの基本的なステップを、ドレミファソラシドの音階に例えるようなもの。音楽は作詞家の方たちは言語の組み合わせができる。それと同じ」と主張した。 福井氏もこの組み合わせには、独創性を認めている。「1個1個のステップもパーツ。たいていはありふれているが、組み合わせによって独創性が生まれてくるのは、音の組み合わせによって音楽に独創性が生まれるのと全く一緒。組み合わせ全体で著作物という風に認められていくのは、すごく健全な考え方だ」と賛同した。
■生成AIによる創作物への懸念は
著作権を集中管理する団体といえば、音楽業界におけるJASRAC(日本音楽著作権協会)が有名なところだ。福井氏は、集中管理団体が機能することの長所・短所を語った。「引用のルールは、音楽も絵画も文章も一緒。ところがJASRACみたいな集中管理団体ができると、権利管理が厳しくなり、その結果、あたかも音楽が引用できないみたいな誤解が広がっていく。これが一つのマイナスで、歌詞が引用できないと思うのも現場の萎縮だ。実際、集中管理団体みたいな仕組みができると、それによってちょっと過剰な市場原理が生まれやすくなるという事態は確かにある。その点は気をつけなければならない。他方で、集中管理のメリットも確かにある。例えば『この音楽を使いたい、演奏したい』と思う時に、30分もあれば使用許可が取れるのも音楽くらい。パッと権利者を探し出して、許可を取る手続きを行って、そして安全に使うことができる」。 また近年では、生成AIによる著作権の問題も多い。主なニュースを拾うだけでも「声優の声を無断利用」「イラスト無断学習」「生成AIを用いた作品がアートコンテストで1位となり米国著作権局が権利却下」など、多岐に渡る。福井氏は「生成AIが2020年代に入って超進化を遂げた。現在の世界の通説では、AIが自動生成したものに著作権はない。EUでは、AIで作ったものには全部『Made with AI』」というマークを入れないといけないAI法が策定されている」と説明。またAIを用いて作ったものは、それを指示して作らせた人間にも、その権利は及ばないという。 さらに今後、生成AIによるトラブルとして心配される点において、パックンが「これからAIに無数の旋律を作らせて著作権を取って、後々生まれてくる音楽に対して『うちが作ったぞ』と金を請求する、アーティストでもなんでもない、むしろ効率を下げるような著作権ビジネスが生まれてくるのではないか」と質問。これに対して福井氏も、現在の通説を踏まえた上で「AIが作ったのか、人間が手を加えたのか区別がつかない。人間クリエイターが、AIの助けを借りたビジネスをしている人に訴えられるリスクはある」とも述べていた。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部