人手不足を感じる飲食店は64.3% 高水準ながらも前年から改善傾向、DXやスポットワークの普及が背景か
飲食店と旅館・ホテルにおいては、「アフターコロナ」が到来してから深刻な人手不足が続いた。飲食店では特に非正社員部門において長く業種別トップが続き、旅館・ホテルでは2022年12月には正社員と非正社員それぞれ8割を超えるなど、コロナ禍以前を上回る高水準で推移した。 こうしたなか、2024年に入って以降は引き続き業種別では上位ではあるものの、緩やかな改善傾向が見られている。インバウンド需要がさらに高まっているなかではあるが、業務効率化に向けたツールやスポットワークなど多様な働き方の普及が、人手不足の解消に寄与している背景の一つとして考えられる。
今後の見通し:深刻な人手不足倒産、「103万円の壁」見直しが人手不足解消の糸口となるか
人手不足割合は正社員では51.7%、非正社員では29.5%となった。正社員では引き続き5割を上回るなど「高止まり」の局面が続いている一方、非正社員では前年同月比で低下が続き、飲食店や旅館・ホテルを中心に上位10業種では9業種が同様に低下しており「やや緩和傾向」といえよう。 こうしたなか、人手不足が企業に与える影響は一段と深刻化している。2024年の「人手不足倒産」は10月時点で287件にのぼり、過去最多だった2023年の通年(260件)を既に上回り、2年連続の過去最多を記録した。特に「2024年問題」に直面する建設・物流業の割合が大きく、全体の4割以上を占めた。また、従業員数10人未満のケースが8割近くにのぼるなか、今後も主に大企業の賃上げペースに追いつけないことで小規模事業者を中心に人材の確保・定着は難しくなることが予想され、人手不足倒産は高水準で発生するものと見込まれる。 政府は、2023年の段階から「2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均1500円を目指す」と表明した。物価高対策の側面が強いものの、人件費の増加に耐え切れない企業にとっては大きな痛手となるケースも想定される。その場合には人手不足にさらなる拍車がかかる懸念も考えられるため、今後の人手不足動向を左右する大きな観点といえよう。 また、最低賃金引き上げにもかかわらず、いわゆる「103万円の壁」に代表される所得税の基礎控除合計が変わらなければ労働時間の減少に繋がることも考えられ、見直しに向けた議論も活発化してきた。控除合計の上限が見直されれば労働時間の拡大が期待できることから、特に非正社員においては人手不足の解消にも貢献できる可能性がある。一方で、最低賃金の上昇に比例した控除上限の見直しにとどまれば、労働時間の増加に至らないだろう。そのため、労働時間の増加による人手不足の解消という側面において、最低賃金の上昇を上回る形で控除合計の上限を引き上げることが求められる。