親子2代で甲子園 東海大菅生・小池選手「父超える」 選抜高校野球
第93回選抜高校野球大会第8日の27日、2回戦に臨む東海大菅生(東京)の小池祐吏(ゆうり)選手(2年)は、父正晃さん(40)=現プロ野球DeNAコーチ=に続き、親子2代で甲子園の夢舞台に立った。1998年に横浜(神奈川)で春夏連覇の偉業を成し遂げた父と比べられることが重荷だった時期もあったが、自らも経験を積み、「父を超える」と言えるようになってきた。 父正晃さんは松坂大輔投手(現西武)を擁する横浜で1番右翼手として活躍。98年夏の甲子園3回戦では先頭打者本塁打を記録した。ドラフト6位でプロ入りし、横浜(現DeNA)と中日で外野手として15年間プレーし、通算55本塁打を記録した。 物心ついたときから野球が身近にあった小池選手は小学校に上がると、横浜の少年野球チームに入った。地元での「松坂世代」の存在感は大きかった。試合で打席に立つと、相手チームの捕手から「お父さん、小池なんだろ」と言われたことがあった。中学になって入った硬式野球チームは、かつて父も所属したチーム。チームメート同士では意識することも無かったが、周囲の大人たちから比べられた。 誇らしさもあったが、こたえたのが中学3年の春、チームが地区予選で敗れてしまった時に言われた言葉だ。中学時代の父も指導した監督から「おやじに比べて全然だめだ」。奮起を促されたのだと分かってはいたが、ふがいなさを自覚していた中で受け止められなかった。 翌日、母麻紀さん(45)に「練習に行きたくない」とこぼすと、母は「行かないでいてみれば」と受け止めてくれた。初めて練習を休んだが、母は気分転換にと買い物や旅行に連れ出してくれた。その間も、野球をやめる考えは全く浮かばなかった。夜は近所の公園で黙々とバットを振り、母は近くのベンチで見守ってくれた。 1カ月が過ぎたころ、「野球したいな」と思わず口に出た。「比べられても自分は自分だから」と諭す母。その言葉でもやもやが消えた気がして、翌日練習に復帰できた。 東海大菅生で1年秋から試合に出るようになると、新聞などに「2世」として取り上げられた。センバツ出場が決まってからも、そうした取材を受けたが、中学の頃のように後ろ向きな気持ちにはならない。目標を聞かれれば「本塁打を打って甲子園で春夏連覇」と答える。選手としての父を尊敬しているのは本当の気持ち。そして、自分自身が活躍すれば、父とは関係なく「自分」を取り上げてくれると信じている。 5番三塁手で先発した24日の初戦・聖カタリナ学園(愛媛)戦では三回に甲子園初安打を記録し、八回にはダメ押しの犠飛を放った。試合前日には父から「初球から積極的に振っていけ」とアドバイスを受けた。初打席は見逃し三振してしまったが、勝利に貢献し、「次こそは初球から振って結果を出す」と日本一を目指して張り切っている。【林田奈々】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。