<春に輝け・常総学院の挑戦2021>/中 足りないものは何か 自主特訓で欠点克服 /茨城
2020年9月の秋季県大会準々決勝、石岡一にコールド勝ちを決めて喜ぶナインを前に、青木良弘(2年)はベンチで悔しさをこらえきれずにいた。 新チーム発足以降、全ての公式戦で4番を打ってきた。「自分に強打はない。チャンスに打てるバッターにならなければ」と思いながら打席に立つ。慢心していたつもりはない。「気を抜いたら外される」。常に緊張感と隣り合わせだった。 だが県大会1、2回戦、バットは凡打の山を築いた。2試合で7打数無安打。2回戦翌日のノックでは、チームメートが普段なら来ないはずの自分のポジションに呼ばれた。「やばい」。3日後、メンバー表に自分の名はなかった。 試合中の動画を見返すと、絞っていたはずの狙い球以外にも1球目から手を出していた。三振を怖がり、意識がぶれていたことに気づいた。 「それぞれが自分に足りないものを見つけ、それを克服しよう」。島田直也監督が繰り返してきた信条だ。同じ時間、同じ練習メニューをこなした部員たちが、そこで気づいた自分の欠点を自主練習で克服する。1、2年生合わせて部員51人、全員に目を届かせることは難しいが、一部を特別扱いすることもしない。自ら成長した人間だけがポジションをつかみ取り、穴を埋められなかった人間はレギュラーの座を奪われる。 もう一つ重視してきたのは、部員一人一人が持つビジョンだ。監督就任直前、部員たちにそれぞれが目指すものを紙に書かせた。青木が提出した紙には「背番号は3、4番で打ちたい」と書かれていた。「チームで強打者がいないなら、チャンスに打つ4番を自分が背負う」との思いから出た言葉。興味を持った監督の起用に、結果で応えてきた。しかし、気づけば打つことに対する焦りばかりが大きくなっていた。 同年10月4日の県大会決勝。青木は3試合ぶりに4番に戻った。三回表2死満塁。右中間の守備の薄さに気づき、外角に来た球を強く打ち返す。七回にも右前適時打を放ち、4打数2安打3打点。すべては、反省から取り組んできた自主特訓の成果だった。試合は敗れたが、島田監督は「チャンスが回ってくると思って準備してきたな」と笑みを浮かべた。 青木は「ただ打つだけじゃない。どんな形でも、走者を還すのが4番の仕事と気づけた」と振り返る。遠回りにも見える日々の中で、選手たちは着実に大きくなっている。